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コンパニオン診断薬

ドクター畑地の診察室
ドクター畑地の診察室206.2023.8.27. 現役呼吸器内科、総合内科専門医 畑地治です。 世の中に「○○飲んだらすべての病気が治った」「○○制限食をとったらすべての人が健康になる」等、出鱈目情報が溢れています。現代医療の特徴は精密医療で万人に効くような治療はありません。治療方法は個人によって全く違います!おそらく日本で一番多くの呼吸器疾患患者(肺癌、喘息、COPD、肺炎など)を診療する専門医が、最先端の精密医療を解説&ネットでは出し辛い医療や治療の裏側も配信! https://zipangu-management.co.jp/culture_000/hataji/ 三重県出身 自治医科大学卒業後、僻地診療、三重大学勤務を経て、呼吸器内科医師となる 松阪市民病院院長 診療の傍らFM三重で「肺、おさむに聴け!radioを聴いてらんらんらん(lung lung lung)」という毎週月曜日放送の番組を担当 https://fmmie.jp/program/getsumoku/hiosamu.php ***************************** コンパニオン診断薬  肺癌を始めとする癌は、早期発見して手術を行い切除することが治療の原則ですが、残念ながら発見されたときにはすでに転移があり、手術できないことも多々あります。肺癌の多くは非小細胞肺癌(小細胞肺癌でない肺癌のこと、小細胞肺癌は15%、そうでない非小細胞肺癌は85%位であると言われています。)であり、切除不能非小細胞肺癌は可能ならば、ドライバー遺伝子を発見して、それぞれのドライバー遺伝子に応じた治療をすることになります。  最も多いドライバー遺伝子はEGFR、以下、ALK、ROS1、MET14skipping、KRASG12C、BRAFV600E、RET、NTRAKなどさまざまな遺伝子変異に対する治療薬があります。おおよそ、全非小細胞肺癌の半分位の方でこのドライバー遺伝子が発見されると言われていますが、これらの遺伝子の検索には多くの場合、気管支鏡で採取された肺生検の組織を用いて検査されます。10種類近くの遺伝子変異を、それぞれ単独に測定することは、採取できる組織の量を考えると不可能ですので、現在では、「オンコマイン」「アモイ」などと言う同時に数多くの遺伝子を測定することができる方法でドライバー遺伝子を測定することが一般的です。特にオンコマインは、参考情報として、現在はまだ対応する薬が上市されていないようなドライバー遺伝子も含め、50種類のドライバー遺伝子を測定することができますので、松阪市民病院では、オンコマインを使用して肺癌のドライバー遺伝子を測定することが多い状況です。  さて、薬にはコンパニオン診断薬と言うものが存在します。例えば、MET14skippingの遺伝子変異を持つ肺癌に対するテプミトコと言う薬はオンコマインでMET14skipping陽性と検出されても使用することは保険上認められておりません。テプミトコのコンパニオン診断薬は販売中止となった(ArcherMET)(アモイ)であり、そちらで陽性を証明することが必要になります。逆にALK肺癌に用いられるローブレナと言う薬は(アモイ)でALK陽性が証明されても使用することができず、オンコマインなど他の方法で陽性を証明する必要があります。  このようなケースは最近は少なくなってきているものの、まだまだコンパニオン診断薬については改善の余地があると思います。  さて、8月23日、HER2遺伝子変異陽性肺癌に対して、「エンハーツ」と言う抗がん剤が上市されました。コンパニオン診断薬として、オンコマインが承認されたわけですが、ここで大きな問題があります。先程も述べましたように、オンコマインは参考情報として、対応する薬が販売されていないようなドライバー遺伝子の情報も既に提供されています。その中には、HER2遺伝子陽性肺癌の情報も入っており、8月23日以前の情報であれ、主治医はHER2遺伝子変異陽性肺癌患者さんを認識していたわけです。私の患者さんでも2名いるわけですが、保険制度上の原則では、オンコマインがコンパニオン診断薬として承認されたのは8月23日ですので、それ以前のオンコマインの結果を用いて「エンハーツ」を使用することは、原則できなくなってくるわけです。ただ、実臨床では、オンコマインで既にHER2遺伝子変異陽性と出ている患者さんに対し、8月23日以降に再度気管支鏡検査を行い、再度オンコマインを提出することは甚だ非現実的です。柔軟な保険制度の運用を期待しています。 ***************************** ドクター畑地の診察室206.2023.8.27号 毎週日曜日お昼に配信予定です。 次号は2023.9.3.です。 お問合せ、感想などはコチラまで zm.magumagu@gmail.com 畑地 治 https://zipangu-management.co.jp/culture_000/hataji/ 三重県出身 自治医科大学卒業後、僻地診療、三重大学勤務を経て、呼吸器内科医師となる 松阪市民病院院長 https ://mie-matsu-kokyuki.mars.bindcloud.jp/ https://www.facebook.com/mch.respiratory.center/ 診療の傍らFM三重で「肺、おさむに聴け!radioを聴いてらんらんらん(lung lung lung)」という毎週月曜日放送の番組を担当 https://fmmie.jp/program/getsumoku/hiosamu.php ***************************** ★お知らせ★ 好評発売中『ドクター畑地の診察室』バックナンバー 1ヶ月分を220円で購入できます。気になった号がある方はぜひチェックしてみてください! ◆2023年07月 https://www.mag2.com/archives/0001688238/2023/07 2023/07/30 猛暑 2023/07/23 COVID19で人口は減るのか 2023/07/16 直木賞候補作品全部読んでみた 2023/07/09 気胸 2023/07/02 我がダイエット

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