EV劣等生が秀才へ変貌
市場理論で危機を回避へ
米国でHVの真価を評価
トヨタEVで無傷の奇跡
トヨタ自動車の4~6月期営業利益は、市場予想を上回る1兆1209億円であった。半導体不足の緩和による生産回復と、円安が追い風になったものだ。23年度の営業利益目標は、過去最高の3兆円である。すでに、4~6月期で37%の高い進捗率だ。このまま推移すれば、目標を上回る営業利益を達成するであろう。
トヨタが、こうした好業績を上げたのは、EV(電気自動車)での世界的な過当競争に巻き込まれず、「我が道を行く」戦略が機能したものとみられる。現在のリチウム電池によるEVは、本格的な「ゼロカーボン・カー」へ向けての「一歩」に過ぎないと位置づけてきたからだ。トヨタは、EVについて技術とマーケッティングの両面で、確固たる経営戦略を立ててきたとみられる。
この技術面とマーケッティング面からの具体的な分析内容は、後で取り上げるとして、世界のEVブームはさながら「熱病」のような広がりをみせた。EVに乗り出さなければ、自動車メーカーとして失格という雰囲気であった。その点で、世界一の自動車メーカーであるトヨタが、地味な動きであったことから、メディアは「トヨタはEV脱落」とまで酷評するほどだった。先のトヨタの社長交代の裏には、こういう雰囲気も手伝っていたのだ。
それほど、「トヨタ・バッシング」は厳しかった。株価も低迷した。社長交代に当たり豊田前社長は、株主総会で思わず涙する姿が報じられたほどだ。トヨタのEV戦略に対する世界の無理解を嘆いたとみられる。トヨタは、どうしても明らかにしなかったことがある。現在のリチウム電池のEVブームが、すぐに終わると踏んでいたことだ。これは、口が裂けても言えないだけに苦悶したであろう。自らもEV生産の旗を掲げている以上、口外できるはずがなかった。
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