『温泉失格』著者がホンネを明かす~飯塚玲児の“一湯”両断!
VOL.432 / 四国八十八か所“浴場”巡りの思い出4
2023年8月30日発行
今週の目次
1.コラム~うつうつ湯避行 = 浴場でお尻を洗う意義について
2.今週の“一湯”両断!= 『温泉失格』発売2年前にブログに書いたこと
3.不定期連載 旅の思い出ぽろぽろと…… = 四国 “浴場”巡り4
4. 読者からのお便りコーナー = 被災した温泉宿の思い出をぜひ!
5.ただいま仕事中!&発刊済みのお仕事一覧
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1. コラム〜うつうつ湯避行 #432
「浴場でお尻を洗う意義について」
前号の読者コーナーでご紹介した、浴場でお尻を洗うこととレジオネラ菌やコロナの感染に関連性はあるか、ということについて、前号でもご回答いただいた温泉療法医の野城聡志先生から、追加の説明メールが届きました! 以下の通り引用いたします。
お世話になっております。
先日のメルマガの話題について、改めて「浴場で尻を洗う意義」について考えてみました。
その意義とは、「自身の糞便由来の大腸菌などの病原体を浴槽へ持ち込まない」ことだと思います。
「公衆浴場における水質基準等に関する指針」において、浴槽水は“レジオネラ菌は検出されないこと”に加えて、“大腸菌群は1個/ml 以下であること”と定められています。
大腸菌群が検出された場合、そこは糞便で汚染されている可能性が高いと考えられます。
レジオネラ菌は「自然界からどこからともなく浴場へ入り込み、居心地の良いところ(水周りに居着いたアメーバの中)で繁殖するので、入念な清掃・消毒で増殖を防ぐ」ようになります。
大腸菌も自然界のどこにでもいるのですが、浴槽内に持ち込まれる大腸菌の由来として最も多いのは「人間(の糞便)」と考えられます。
つまり、清掃して増殖するのを防ぐ以前に、利用者である我々の心がけで、浴槽に持ち込まれる数自体を少なくするよう関わることができるのです。
(病原体を持ち込まない、という点で、熱や咳、下痢といった症状がある時に公衆浴場の利用を避けるのは言うまでもないですね)。
大腸菌自体は、レジオネラ菌のようにエアロゾルに乗ってヒトに吸入されることで感染を引き起こすことは考え難いですが、例えば消毒されていないプールの水を介して腸管出血性大腸菌の集団感染が起きた事例(2012年、長野県の保育園にて発生)があるように、「ヒトによって持ち込まれ、体外の環境で繁殖し、ヒトに感染を引き起こす」病原体の一つと言えます。
幸い上記の事例以後、プールや公衆浴場において、大腸菌及びその他の糞便汚染が原因となりうる病原体による大規模な集団感染は報告がないようです。
これもひとえに日々の清掃・消毒に携わる方々の御尽力のお陰なのですが、浴場を利用する我々も「大腸菌の“出所(でどころ)”にはならないぞ」という気概を持って、よくよく尻を洗って利用すべきと思います。
最後に新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)について。病原体を含む糞便を口から摂取して感染することを「糞口感染」と呼びますが、「SARS-CoV-2の糞口感染」についての様々な研究をまとめた最近のレビュー(※)によると、未だヒト-ヒト間での糞口感染を裏付ける“明確な”疫学的証拠は見つかっていないとのことでした。
(勿論、感染者の便からSARS-CoV-2は検出されるし、培養細胞や実験動物で糞口感染を支持する結果はあるそうですが、それでは“明確”な証拠とは言えないということですね。
確かにヒトが生活し糞便が存在する環境には、咳をした時などに出た気道由来の飛沫、エアロゾルも存在し得るので、感染を引き起こしたウイルスが正に糞便由来であると証明するのは難しい気がしますね)。
とはいえ、SARS-CoV-2の糞口感染が“明確に”否定されているわけではなく、潜在的な感染経路として注意した方が良いことに変わりはないと思います。
何れにせよ、皆で安全に気持ち良く浴場を利用するために、尻を洗わないで良い理由などないのです。
※
https://www.ajicjournal.org/article/S0196-6553(23)00356-5/fulltext
いやぁ、勉強になりますねえ。野城先生、どうもありがとうございました!
まあ、そんなわけで、今週もどうぞよろしくお願いいたします。
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