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週刊Life is beautiful 2023年9月5日号: 米国大統領選、Tesla FSD V12とSoftware2.0

週刊 Life is beautiful
今週のざっくばらん 米国大統領選 十中八九、トランプ元大統領とバイデン大統領の対決になると予想されていた2024年の大統領選に向けて、新たな動きが出てきました。 先日、行われた共和党の候補者の間でディベートで突如注目を浴びることになったVivek Ramaswamyの存在です。共和党の候補の中では、圧倒的な支持率を持つトランプ氏が「ディベートに参加しない」という暴挙に出たディベートでしたが、そんな中で、それまで無名だったVivek Ramaswamy氏が、巧みな演説で、存在感を強くアピールすることに成功したのです。 Ramaswamy氏は、ハーバード大学でバイオロジーを、イェール大学で法律の勉強をした後、ヘッジファンドで数年働き、Roivant Sciencesという医療パテントの会社を設立し、財を成したそうです。 Ramaswamy氏は、トランプ氏を「素晴らしい大統領だった」と褒めつつも、「トランプ氏がやろうとして出来なかったことをするのは自分しかいない」というポジショニングで、巧みにトランプ支持者に取り込むことにより、なんらかの理由でトランプ氏が大統領選から離脱した場合に、共和党の候補のポジションを確保しようとしていることは明確です。 インタビューやディベートを観た時には、トランプ氏よりはずっとマシだし、バイデンよりも若くて元気が良いので、彼を大統領にするのも悪くないと思いましたが、彼の経歴をWikipediaで読んだ結果、どうも好きになれなくなってしまいました。彼は、自分のことを科学者と呼んでいますが、実際のところは、バイオロジーと法律に詳しいファイナンスの人間であり、科学者やエンジニアとは根本的に違う価値観で生きている人だと思います。 ちなみに、ソフトバンクは2017年にRoivantに$1billionを投資したそうですが、それを知ってから、Ramaswamy氏がWeWorkのAdam Neumann氏に重なるようになりました(ソフトバンクがWeWorkに最初に投資したのも2017年です)。孫さんは、ある種のオーラを出す人に弱いようですが、Ramaswamy氏はまさにそんなオーラを放っています。 Tesla FSD V12とSoftware2.0 先週、TeslaがFSD(Full Self Driving)の最新バージョンを発表し、Elon MuskがX(Twitter)を使って、生で実況中継を行いましたが (Tesla FDS V12)、そこでElon Muskがした解説がとても重要だったので、解説します。 Elon Muskによると、V12はV11と違い、100%ニューラルネットワークで作られているそうです。V11までは、従来型のソフトウェアと同様に、人間が作った、さまざまなルールやアルゴリズムに基づいて自動運転を行ってしましたが、V12からは、その手のコードを排除し、すべてニューラルネットワークの学習に任せたそうです。 従来型のソフトウェアであれば、車線とは何か。車線に従って走るべき。自転車とは何か。自転車には接触しないように避けるべき。信号とは何か。赤信号では止まらなければいけない。 などのルールを人間が定め、それに従って自動運転をするようにプログラムを作っていました。 しかし、V12からは、その手のコードをすべて排除し、人間が運転する自動車から撮影した映像を大量に学習データとしてニューラルネットワークに与え、そのデータから、ニューラルネットワーク自身が、「車線に従って走るべき」「自転車には接触しないように運転する」などのルールを見出し、実行するように作ってあるのです。 これこそが、Andrej Karpathy 氏が2017年にブログで語った「Software 2.0」であり、大量の映像データを持つTeslaだからこそできる芸当なのです。 最近、Teslaは、1万台の NVIDIA H100 GPU で構成されたスーパーコンピュータを作ることを発表しましたが(Tesla's 10,000 unit NVIDIA H100 GPU cluster)、これはTeslaが、全面的にニューラル・ネットワークを使うソフトウェア作り(つまり、Software 2.0)に舵を切ったことを意味します。 以前にも指摘したことがありますが、Software2.0の特徴は、一度その作り方が確立してしまえば、後は、大量のデータと大量の計算資源さえあれば、人間が作ったソフトウェアをはるかに凌駕する質のものを作ることが可能になる点にあります。これまでは「人間よりも安全な運転をする自動運転車」を作ることは非常に困難でしたが、V12をきっかけに、一気に進歩する可能性が大きくなりました。 21世紀のアヘン戦争 日本ではあまり報道されていないかも知れませんが、米国では、Fentanylと呼ばれるオピオイド系の鎮痛剤の中毒患者が急増しており、過剰摂取による死亡者数では、ヘロイン、コカイン、覚醒剤よりも多くなっており、19歳から49歳のアメリカ人の死亡の一番の原因になっているそうです(Why is fentanyl so dangerous?)。 これほどまでに、Fetanyl中毒が増えた原因を作ったのは、売り上げを増やしたい医薬会社の策略で、医者に賄賂を渡してFetanylを処方させるなどして、中毒患者を増やしたことが知られています(Big Pharma companies are the “drug kingpins” of the opioid crisis)。 その手のことが明らかになった後もFetanylの中毒患者が減らない原因は、メキシコ経由で大量に流れ込むFetanylで、サンフランシスコやシアトルで増えているホームレスの多くが、そんなFetanylに手を出していることが知られています(実際には、Fetanylに手を出したためにホームレスになってしまった人が大勢います)。 ちなみに、メキシコ経由で米国に入ってくるFetanylの多くが中国製で(The Brazen Way a Chinese Company Pumped Fentanyl Ingredients Into the U.S.)、これは中国共産党の陰謀だと主張する人すらいるぐらいです。18世紀、イギリスは、インドで製造したアヘンを、清(当時の中国)に輸出して巨額の利益を得ていたため、それが原因で「アヘン戦争」と呼ばれる戦争が起こりましたが、それと同様のことが、今度は、中国と米国の間で起こっているという皮肉な状態です。 インプレッションが稼げるTweet 最近、ブランド名をXに変えたTwitterですが、広告収入をユーザーに還元する仕組みを作ったということなので、早速申し込もうと思ったのですが、当初は、過去3ヶ月間のインプレッションの数が毎月500万を超えていないとそのプログラムに参加できないとの発表があったので(後に33ヶ月トータルで1,500万インプレッションあれば良い、と変更)、少し意図的にインプレッションを稼ぐTweetを書いてみました。 一昔前に、「はてなブックマーク」稼ぎで遊んだ経験があるので、その時に得た知見を生かして、色々と実験してみました。その中で学んだことを箇条書きにすると、以下のようになります。140文字を超える長文投稿よりも、連投の方がインプレッション数は稼げる。連投の場合、一番最初の投稿が何よりも重要。99%の勝負はここで決まる。最初の一言でトピックは何かを明確にしつつ、全部を読みたいと思わせる必要がある。他の人が書いていないことが書かれていること(独自性があること)を強調する。インパクトのある画像も効果的

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