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週刊Life is beautiful 2023年9月12日号: Web3と宇宙

週刊 Life is beautiful
今週は、ネットのアクセスが難しい場所(トンガ王国)に来ているので、1週間前に書き溜めたものを配信させていただきます。 それ故、「私の目に止まった記事」は割愛し、質問コーナーは、私が質問者となってChatGPTに答えてもらったものを掲載します。これらの質問は、私が実際に、日々疑問に思ったことを解決するために、ChatGPT(もしくは Bard)に投げかけている類の質問です。 「今週のざっくばらん」コーナーに関しては、以下のような事情で執筆したWeb3に対する私の考えをまとめたものになります。 7月の中頃に、私のところに、JAXA(宇宙航空研究開発機構)のメンバー向けの機関誌に、Web3に関する解説記事を書いて欲しいという依頼が来ました。私が執筆した「シリコンバレーのエンジニアはWeb3の未来に何を見るのか」を読んだ担当者が、JAXAのメンバーも、Web3について勉強すべき、と考えたから、とのことです。 最初は読者の数も少ない(数千人)ので、断ろうと考えたのですが、ちょうど9月にオフラインになる時期があるので、その時にメルマガとして発行するのであれば、一石二鳥と考えて、仕事を受ける事にしました。文章の著作権は私にあるので、メルマガで配布しても問題ありません。 書籍「シリコンバレーのエンジニアはWeb3の未来に何を見るのか」には、私がWeb3に関して持つ知識や意見を全て詰め込んだつもりですが、ある程度の文字数が必要な「書籍」という形を取った結果、とても長くなってしまい、逆に、メッセージがちゃんと伝わりにくくなっていると感じます。 今回は、数ページの解説記事なので、要点だけを絞って書くことが出来たので、書籍よりも、メッセージが伝わりやすくなっていると思います。 この原稿は一度一気に草稿を書き上げて、担当者の方に送り、フィードバックをもらってから書き上げる、という形を取りました。しかし、書いているうちに、後半は政治家や官僚の批判になってしまい、そのまま渡すと、担当者による「忖度(そんたく)」が働いて、表現を和らげるようにリクエストされることは明確でした。そこで、あえて、その部分は削った草稿を渡し、締切ギリギリになって、政治家や官僚の批判を加えた最終稿を送る事にしました。 過激な部分を削った草稿に対しても、「有罪判決を受けていない歌手(スピンドルの広告塔となったガクトのこと)の実名を出すのは問題がある」というリクエストが来ました。以下の最終稿を見た担当者が、どう出るかはまだ不明です(実際にJAXAメンバー向けの機関誌に掲載されるのは9月末の予定です)。 今週のざっくばらん Web3という考え方が出来た背景 Web3とは、Ethereumのファウンダーの一人でもあるGavin Woodが2014年に提唱したコンセプトで、ブロックチェーン技術を活用した、非中央集権的(decentralized)で、信頼不要(trustless)で、透明性(transparency)のある、エコシステムのことです。 W3Cのティム・バーナーズ=リーによって提唱されたセマンティック・ウェブ(ウェブページにマシンが読み取りやすいメタデータを追加しようという試み)のことをWeb3.0と呼びますが、それとは全く異なるものなので、混同しないように注意してください。 2009年にSatoshi Nakamotoと名乗る人物により発表された暗号通貨Bitcoin、およびそれを可能にしているブロックチェーンは、参加者誰もが、自分の利益だけを最大化しようとしても、管理者なしに、安定して動いてしまう分散台帳の発明、というコンピュータ・サイエンスの歴史に残る画期的なものでした。 Bitcoinを作ったSatoshi Nakamotoは、金本位制の崩壊以来、必要に応じていくらでも発行量を増やせる法定通貨に対するアンチテーゼとして、どの組織にも管理されず、総発行量があらかじめ定まったBitcoinを世の中に放った、と解釈しても良いと思います。 Bitcoinの価値は、ブロックチェーンの技術的素晴らしさと、Bitcoinの存在意義を理解する人が増えるに従い急騰し、一時は「インターネット上のネイティブ通貨」として大きなエコシステムを作るのではないかとすら期待される存在でした。 しかし、当初は、Bitcoinが力を発揮したのは、犯罪で得たお金を警察の目を逃れてやりとりするマネー・ロンダリングと、政府の目を逃れた海外に資金を送金するキャピタル・フライト、という皮肉な状況でした。今でも、身代金の支払いはBitcoinなどの暗号通貨で行われることが多いし、北朝鮮が次々に打ち上げるミサイルの資金は、ハッカーたちが盗んできた暗号通貨が資金源になっています。 Bitcoinは、いまだに「インターネット上のネイティブ通貨」にはなり得ていませんが、インフレ傾向にある法定通貨のヘッジとして、金と並ぶ、金融商品としての地位を確立しつつあると言えます。 暗号通貨の世界に、Bitcoinに続くイノベーションをもたらしたのは、Ethereumです。Ethereumは、2013年にVitalik Buterinが提唱したアイデアで、ブロックチェーンの上に、本格的なプログラミング環境を作り、暗号通貨と結びついた、非中央集権的なソフトウェア・プラットフォームに発展させる、という発想です。 Vitalik Buterinは、冒頭で紹介したGavin Woodらの協力を得て、2015年にEthereumをローンチすることに成功しました。今では、Ethereumは、Bitcoinに次ぐ流通量と時価総額をもつ暗号通貨に成長し、その上で、数多くのアプリケーションが動いています。 Web3のビジョン Gavin Woodが提唱したWeb3は、暗号通貨業界で働くすべての人たちが目指すべき世界の指針となる、業界全体の「ビジョン」のような存在になっています。 GavinがWeb3に込めたメッセージは、非中央集権的(decentralized)、信頼不要(trustless)、透明性(transparency)の三つです。 非中央集権的(decentralized) 非中央集権的とは、インターネット上のサービスのように、データやアプリケーションをコントロールする人や組織が存在しない、ことを意味します。 FacebookやYoutubeのような、ユーザーがコンテンツを提供するスタイルのサービス(SNS、もしくはWeb2.0サービス)は、表向きはユーザーがコンテンツをコントロールしているかのように見えますが、実際には、データを保持しているのも、誰がどのデータにアクセスできるかを決めているのは、サービス事業者であるMetaやGoogleです。そのため、サービス事業者が「このコンテンツは不適切」と判断すれば、否応なしに消されてしまうし、「どのコンテンツをより多くの人に見せるか」なども、すべてサービス事業者のコントロール下にあります。また、アプリケーション内で使われているアルゴリズムも原則としては非公開です。 特定の管理者がおらず、P2P(ピア・ツー・ピア)の仕組みで運営されているパブリック・ブロックチェーン上にデータを置き、そこで(スマートコントラクトという仕組みで実装された)アプリケーションを走らせれば、コンテンツを100%ユーザーの管理下に置くことも可能だし、「コンテンツを他の人にアクセス可能にするアルゴリズム」なども、すべてオープンにすることが出来ます。 ユーザーが提供したデータをビジネスに活用したり、スポンサーによるユーザーの洗脳を可能にしてしまうなど、SNSサービスに対する不信感が高まっている中、中央集権の存在しない、パブリック・ブロックチェーンがこの問題を解決するのではと考える人々も少なくありません。 信頼不要(trustless)

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