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奇跡のみつお物語その67

「琉球スピリット」~みつおの世界~
【真夜中の出発】 「本当にベンツなんだ!」 迎えに来たのはベンツのバスだった。 冗談だと思っていたが本当にベンツで迎えにくるとは思わなかった。 1ヶ月前… 「みっちゃん、山梨に来いよ、残業すれば稼げるよ」 「残業は多いの?」 「毎日あるよ、俺はやらないけど」 そこは工場の中のライン作業である。 稼ぎたい人は毎日残業をして月50万円近く稼いでいるらしい。 東京の現場は、2年目から業績が悪化したため給料を減らされたのだった。 それでアルバイトとかを探したのだが、中々夜の時間帯だけのアルバイトは見つからなかった。 そんな時に同級生のサトシとたまに電話で話をするようになっていたのだった。 主にパチンコの話で盛り上がっていたのだが、冗談混じりで、いい仕事無いか聞いてみたのだった。 サトシは派遣会社から山梨の工場で勤めていたのだが、その派遣会社の人にみつおの事を話すとその担当の人は人を欲しがっていたみたいでみつおにアプローチしてきたのである。 「どうですか?契約するならベンツで迎えに行きますよ」 「マジですか?いいですねぇ、じゃここの会社を辞めたら迎えにきてもらいますね」 冗談と思っていたのだが、本当にベンツで迎えに来たのでびっくりしてしまったのだった。 イメージしていたベンツではないが、大きな黒塗りのベンツのバスだった。 いよいよ山梨に向けて出発した。 本当は気持ちよく退社して次の仕事に向かいたかったが、そうはいかなかった。 会社を辞めたいと言ったのだが、断られたのである。 今まで散々とみつおを叱っていた社長や上司達だが、何だかんだと言っていいようにみつおをこき使っていたので、いざみつおがいなくなると、簡単にこき使える人間がいないので困るのである。 みつおは、怒鳴られようが何を言われようがくじけることはなかった。 超人的な鈍感力の持ち主である。 たとえ相手が激怒していても、それは相手の問題だと思っていた。 自分が怒られているのではなく、相手が怒っているのだ。 怒っている相手に同情さえしてしまうのである。 だって、みつおですから… 何を言っても響かないみつおには、逆に何でも言えたので、言う方も楽なのである。

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