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【死んでも書きたい話】 11年もシリアで拘束の地獄

安田純平の死んでも書きたい話
今年の8月は中旬の台風の影響が大きかったせいか、突然大雨が降ったり、晴れたと思ったら体温より暑かったり、かと思ったらまた雨だったりという極端な気候だった印象がありますが、いかがおすごしでしょうか。 ●クレジットカードをつくれました 当メルマガの初期のころに書きましたが、2015年にシリアに行く前に引っ越しをした際にクレジットカードの住所変更をしていなかったため、拘束中に更新されたカードを受け取れませんでした。カード会社からは電話があったそうですが出られるわけがなく、放置状態となったためそのままカードが失効になり、たった千数百円の引き落としがされずブラックリストに入れられてしまいました。帰国後にカード会社に事情を説明しましたが全く考慮されず、新たなカードをつくることもローンを組むこともできませんでした。 ためしにネットで簡単にできるPayPayカードの申し込みをときどきしていたのですが、速攻で却下されるという状態がずっと続いていました。ところが、先日、久しぶりにやってみたところあっさりと審査が通りました。 帰国からもう4年10カ月ですが、引き落とされなかった千数百円を振り込んでからはさらに期間が短いわけで、ブラックリストが消えるのは4年くらいということなのでしょうか。以前調べたところ該当の信用情報機関はたしかCICという会社で、ネット情報では事故情報の登録期間は5年で、登録された原因が解消されてから計測されるとあるのですが、実際はもっと短いのかもしれません。 2015年の前から持っていた別のカードは帰国後に更新できたので、新たなカードをつくれないことの実害はありませんでした。それでも信用情報のブラックリストに載せられていることを思い出すだけでも胃のあたりにずしりとくる重苦しさがあったし、ローンが組めないということは大きな買い物ができないということで、将来の可能性が制限されていたのは確かです。 PayPayカードがつくれたところでわざわざ使うこともないのですが、新たにつくるとPayPayポイントがもらえるという、誰でも得られるサービスを私も得られたことがささやかながら嬉しくて、私の中にまだ囚われたままの部分があったのだと改めて感じました。 拘束されたために制限されていたことがひとつ消えただけでも、なんとも言えないスッキリ感があります。実害が大きくないとか代替手段があるとかそうした問題ではないのです。行動に制約があり、余計なことを考えなければならないし、制限が課せられていると考えるだけで後悔や罪悪感のようなものが胸に忍び込んできます。制限することの効果としてそうした精神的な制裁という意味合いが大きいのではないかと思います。 旅券は相変わらず出ておらず、裁判が続いています。海外に行かなければいいとか、国内で仕事すればいいとか、そういう問題ではないのです。 発給拒否の理由である「トルコが5年間の入国禁止措置をしているから」というのも今年の10月23日で切れるので、発給拒否の理由はなくなります。しかし、トルコの入国禁止が更新されれば同じことの繰り返しになるし、渡航先などの制限は外務大臣の裁量でできるので、特別な制限のない一般的な旅券が出るかどうかも分かりません。 未来のことを考えてもしかたがないのですが、PayPayカードのようにあっさりと発給されたらよいし、そうあるべきだと思っています。

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  • ジャーナリスト安田純平が現場で見たり聞いたりした話を書いていきます。まずは、シリアで人質にされていた3年4カ月間やその後のことを、獄中でしたためた日記などをもとに綴っていきます。
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