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高野孟のTHE JOURNAL Vol.616 2023.9.4
※毎週月曜日発行
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《目次》
【1】《INSIDER No.1222》
半藤一利『幕末史』の反「薩長史観」に学ぶ/「民権思
想」を遡る・その5
【2】《CONFAB No.582》
閑中忙話(8月27日~9月2日)
【3】《FLASH No.530》
自民党右派に「フランスの少子化対策」の苦闘を学ぶ気
はあったのか/日刊ゲンダイ8月31日付「永田町の裏を
読む」から転載
■■INSIDER No.1222 23/09/04 ■■■■■■■■■■
半藤一利『幕末史』の反「薩長史観」に学ぶ/「民権思
想」を遡る・その5
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このシリーズの前々回(No.1218)では上田藩士=赤
松小三郎の「公武合体」論、前回(No.1220)では米沢
藩士=宇加地新八の「立憲君主制憲法案」を紹介した。
このような、後に「士族民権」と呼ばれたりもした武士
の中の開明的インテリ層による憲法や議会制の論議は、
幕末には江戸だけではなく地方でも驚くほどの広がりで
行われており、それが他方での農村地主、僧侶、医者な
どの「田舎紳士」を中心とする純民間の勉強会活動とも
相俟って、明治期早々からの自由民権運動の勃興を準備
したのである。
それらこそが実は「維新」の本筋で、後のことなど何
も考えずに暴力的に幕藩体制を破壊することにのみ血道
を上げた長州・薩摩のインテリ欠如の下級武士のやり方
は、むしろ邪道であったのではないか、ということも指
摘しておいた。
●薩長の尊皇なんて泥棒の屁
歴史研究家の半藤一利は薩長嫌いで有名で、『幕末
史』(
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の冒頭で、小学生から中学2年生までの8年間、「まさ
しく戦前の皇国史観、正しくは『薩長史観』によって、
近代日本の成立史を徹底的に仕込まれた」が、新潟県長
岡市の父親の生家で夏休みを過ごすたびに祖母からはこ
んなふうに言い聞かされたのだそうだ。
「あの薩長なんて連中はそもそも泥棒そのものなんだ
て。7万4千石の長岡藩に無理やり喧嘩を仕掛けおっ
て、5万石を奪い取っていってしもうた。なにが官軍
だ。連中のいう尊皇だなんて、泥棒の屁みたいな理屈さ
ネ」
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