メルマガ読むならアプリが便利
アプリで開く

【Vol.498】冷泉彰彦のプリンストン通信『世界経済、1つの楽観論』

冷泉彰彦のプリンストン通信
「港区の中学生がシンガポールで見る格差とは?」  東京都の港区では、区長が、「来年度からすべての区立中学校で海外への 修学旅行を実施する」と発表したそうです。初年度の2024年度はシンガ ポール3泊5日、つまり丸3日半滞在して夜行便で戻る日程で、シンガポー ル訪問としては十分な期間になると思います。  対象となるのは、区立中学校3年生の全生徒にあたる約760人で、公立 中学の全員を対象に海外修学旅行を実施するのは都内初だそうです。  その目的ですが「国際人育成に向けた取組の集大成」だそうで、「海外の 現地で対話する経験を味わい、言語の重要性に対して認識を深める」という ことで、日本に近い英語圏の国で、治安もよいということが、選ばれた理由 とされています。  裏の事情としては、港区は私立中学への進学率が4割以上であり、税収の 割には公立中学の生徒が少ないので、この種の予算が計上可能ということが 指摘されています。その金額ですが、総額は5億2千万円で、1人あたり6 8万円の補助ということです。  このニュースに対しては、「絶望的な格差社会」だという意見がネットで は溢れています。金ピカの港区だから可能な企画で、地方の自治体では逆立 ちしてもムリ、そんな印象のようです。  私は大いに結構だと思います。そして港区の小学生には思い切り格差を感 じてもらいたいと思います。といっても、「自分たちは港区民だから豪華な 修学旅行ができてザマミロ」という格差ではありません。  まず2022年のデータですが、一人あたりGDPが82807ドルのシ ンガポールと、その半分以下の33815ドルに甘んじている日本との「格 差」を徹底的に痛感して欲しいと思います。豊かさ、人々の自信、都市の活 気、国家としての威信、もしもそこで「格差」を実感したら思い切り悔しい と思って欲しいです。  その上で、かつて日本は世界のトップクラスであったのが、どうして没落 したのか、シンガポールはどうして浮上したのか、その成長率の「格差」も 痛いほど痛感して来て欲しいです。  人々がどんな生活をしているのか、日本のように夜遅くまでダラダラと会 社や酒場にいるのか、それとも夕方以降は家族とともに過ごしているのか、 平日は外食の多いのは何故か、そうしたライフスタイルの「格差」も、そこ にある「幸福度」などの「格差」も、もっと言えば女性が活躍している実態 の「格差」もできれば発見して欲しいです。(続く)

この続きを見るには

この記事は約 NaN 分で読めます( NaN 文字 / 画像 NaN 枚)
これはバックナンバーです
  • シェアする
まぐまぐリーダーアプリ ダウンロードはこちら
  • 冷泉彰彦のプリンストン通信
  • アメリカ北東部のプリンストンからの「定点観測」です。テーマは2つ、 「アメリカでの文脈」をお伝えする。 「日本を少し離れて」見つめる。 この2つを内に秘めながら、政治経済からエンタメ、スポーツ、コミュニケーション論まで多角的な情報をお届けします。 定点観測を名乗る以上、できるだけブレのないディスカッションを続けていきたいと考えます。そのためにも、私に質問のある方はメルマガに記載のアドレスにご返信ください。メルマガ内公開でお答えしてゆきます。但し、必ずしも全ての質問に答えられるわけではありませんのでご了承ください。
  • 880円 / 月(税込)
  • 毎月 第1火曜日・第2火曜日・第3火曜日・第4火曜日