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233回 連帯責任と堂々たる差別

和田秀樹の「テレビでもラジオでも言えないわたしの本音」
立命館大学生命科学部特任教授というのに指名されて、立命館大学の草津キャンパスで講義をした。 とても素敵なキャンパスだ。 大津に泊まることにしたが、タクシーで7000円もかかるということで、東京から車で行くことにした。 実は、もう一つのお目当てが新東名高速道路だ。 東北自動車道と常磐自動車道の一部区間が120キロになったのは知っていたし、そこを走るのは快適だが、この新東名高速道路は2019年(平成31年)3月1日から試験的に120 km/hとなり、6車線化事業完了同日に正式に120 km/hに引き上げられたとのことだ。 東北自動車道より3年も早いのだが、それもそのはずで、伊勢原市 - 豊田市間では140 km/hを担保する構造で、最初から速く走れるように設計されている。 実際、走ってみると道幅が広く、120キロで走っても全然スピード感がなく走れる。 頭の固い警察官僚と行政のおかげで、日本は世界ではトップレベルの自動車技術をもちながら、高級車市場では、勝ち目がないに近い状態だ。 レクサスなどは確かにアメリカで人気だが、スポーツカーやスポーツタイプの車では、全然日本の車が出る幕がない。 ドイツでは、多少事故が起こっても、アウトバーンを守らないとドイツの自動車産業がダメになると信じられていて、何度となく、速度制限の案が出ても潰されているそうだ。 ちょっとでも人が死ぬと大慌てで規制するようなバカな警察官僚とそれを喜ぶ国民がいるから、日本の車は円安なら売れるが円高なら売れないようになった。 ドイツの車やイタリアの車は、ユーロが高くても安くても売れるのと大違いだ。 それにやっと気づいたのか120キロ制限になったということだろう。 それでも所詮120キロでアウトバーンには程遠い。 日本の高速道路の制限速度が100キロになったのは、1963年の名神高速道路の開業のとき(全線開通は1965年)らしい。60年も前の話だ。 当時は、国産車は100キロ出せる車はなかったとのことで、100キロ制限というのは危ないからでなく、日本の自動車メーカーに発破をかけるためのものだったそうだ。 そして、それを日本の自動車メーカーはクリアして、世界に勝負をかけようというときに、警察官僚が意地悪して、それから60年近く制限速度の引き上げを行わなかった。 それどころか、片側3車線の高速道路だけ100キロ制限だが、2車線の高速道路は80キロに引き下げられた。 警察官僚のおかげで、日本の自動車産業は外国に勝てなくなった。 泥酔運転の大事故が起こると、酒気帯び運転まで厳罰化し、挙句の果ては朝にアルコールチェックをして、地方の飲食文化を叩きつぶしたのも警察官僚だ。地方の警察本部長はすべて東京の警察官僚なので、地方のことなんかおかまいなしだ。そして、世界で唯一、75歳以上の高齢者から免許を取り上げるという暴挙にも出た。 さて、快適に新東名を走れると思ったら、道のわきには120キロ制限を示す標識がものすごい数で立っているのに、ほとんどの車がせいぜい105キロしか出さない。 120キロが容認されて3年も経っているのにである。 トラックにいたっては、80キロ制限なのに、なぜか追い越し車線(いちばん内側の車線)を走り、なかなかどいてくれない。 結局、この道は素晴らしい道路であり、120キロ制限なのに、まったくそれが活かされていない。 警察も、スピード違反はガンガン取り締まって金を儲けるが、社会実験でもあるし、日本国のため(たとえば自動車産業のため)に120キロにしたのなら、90キロやそこらで追い越し車線を占拠する車を取り締まったらどうなのだろう? 交通マナーは、「マナー」である。 法律を守るとか、急いでいる人間にとかの思いやりもマナーなのは確かで、ゆっくり走ることがマナーではない。 たとえば高速道路でわざと30キロくらいで走る人間が続出すればどうなるかを考えてみればいい。(確か、これは法に触れるはずだが) 少なくとも、この国では、みんなに100キロ制限がしみついているうえに、アウトバーンのように速い車に道を譲るマナーが浸透していないので、半永久的に120キロ制限は無理だということがよくわかった。

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  • 和田秀樹の「テレビでもラジオでも言えないわたしの本音」
  • 世の中のいろいろなことにたった一つしかないと考え、それを信じ込むことは、前頭葉の老化を進め、脳に悪い。 また、それが行き詰った時に鬱になるというメンタルヘルスにも問題を生じる。 ところが日本では、テレビでもラジオでも、○○はいい、××は悪いと正解を求め、一方向性のオンパレードである。 そこで、私は、世間の人の言わない、別の考え方を提示して、考えるヒントを少しでも増やし、脳の老化予防、メンタルヘルス、頭の柔軟性を少しでもましになるように、テレビやラジオで言えない暴論も含めて、私の考える正解、私の本音を提供し続けていきたいと思う。 質問、相談、書いてほしいテーマ等、随時受付。
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