vol.194：リストラ効果で早くも高収益達成の中国テック企業。リストラは高度人材を獲得できるチャンス

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 知らなかった！中国ITを深く理解するためのキーワード vol. 194 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ みなさん、こんにちは！ITジャーナリストの牧野武文です。 今回は、大手テック企業のリストラについてご紹介します。 昨2022年から、BAT（百度、アリババ、テンセント）に代表される大手テック企業が軒並みリストラを進めています。規模は異なりますが、だいたい全従業員の10％程度を減らすリストラです。 大手テック企業は成熟をしてきて、これ以上、大きく成長する余地が少なくなっていること、コロナ禍の影響などで、利益率が落ちたからです。しかし、2023年になってみると、大手テック企業が軒並み高い純利益をマークしました。前年比50％以上の企業が多く、アリババは2733.38％増、京東（ジンドン）は2468.1%増というとんでもない伸び率を示しました。リストラ効果がここまで早く出てきたことに多くの人が驚いています。 効果がすぐに出る理由は、中国企業のリストラは人員削減ではなく、事業削減だからです。不採算事業を放棄する、投資をするだけで黒字化が難しくなっている事業を放棄する、または他社に譲渡する形で、事業を削り、成長戦略を組み直します。大手テック企業は、主力事業から生まれた利益を新規事業に投資をするという構造になっているため、無駄な事業を削れば、早い段階で効果が現れるのです。 また、大手テック企業がリストラをすることは、中堅テック企業にとってはチャンスになっています。優秀な人材を獲得できるチャンスが生まれるため、miHoYo（ミホヨ）、小紅書（シャオホンシュー）などは積極的に人材獲得に動いています。大手テック企業のリストラは、決して好ましいこととは言えないものの、大手は身軽になって利益を生み出し、中堅にとっては人材と技術のトリクルダウンが起きるということになっています。悪い状況を、好機と捉え、業界が動いているようなところがあります。 そこで今回は、大手テック企業のリストラの状況をまとめ、人材市場がどのように動いているかをご紹介します。 知らなかった！中国ITを深く理解するためのキーワード vol. 194 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ▼目次▼ リストラ効果で早くも高収益達成の中国テック企業。リストラは高度人材を獲得できるチャンス。 小米物語その113 今週の「中華IT最新事情」 次号以降の予定 Q&Aコーナー ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ リストラ効果で早くも高収益達成の中国テック企業 リストラは高度人材を獲得できるチャンス。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 今回は、中国テック企業のリストラについてご紹介します。 2023年も残りがあと1/3となり、2023年前半のさまざまな統計情報が公表されるようになってきています。その中で、多くの人が驚いたのが、大手テック企業の業績です。営業収入は以前と大きくは変わらないものの、各社とも純利益が大幅に伸びています。 ▲2023年上半期、テック企業純利益ランキング。アリババと京東は驚異的に純利益を伸ばした。 2022年上半期は、新型コロナ感染の再拡大などで利益が大幅に減少したこともありますが、各社とも大幅に純利益を伸ばしました。アリババに至っては、前年比2733.38％増、京東（ジンドン）は2468.1%増という常識外の数字になっています。その他の企業も50％以上の伸び率で、美団（メイトワン）、微博（ウェイボー）、快手（クワイショウ）は赤字から黒字に転換をしました。ここ数年厳しい状況に陥っているビリビリも赤字幅を半分程度に圧縮しています。テック企業には明るい兆しが見えてきました。 この一覧は上場企業のものであるため、未上場のバイトダンス、ファーウェイの業績は公開データがありません。しかし、各社報道によりほぼ明らかにされています。それによると、バイトダンスの2023年上半期の純利益は150億元前後で、昨年同時期から67%増となり、ファーウェイの純利益は456.23億元で318.1%増となっています。 2021年頃から進めている各社のリストラの成果が出て、営業収入が増えなくてもコストが下がり、利益が生まれる体質になってきました。