2023年 37号 【長尾和宏の痛くない死に方】
長尾和宏です。今日は福島県いわき市で僕が原作の映画『痛くない死に方』の上映会でした。
そこにあわせてトークショーにお呼びいただきました。
いわき市は先日の台風で、豪雨被害に遭われている。今だライフラインが復旧しない地域も
あると聞いた。そんななか、僕がのんきに話しても大丈夫? と思ったのだが、大勢の方が
集まり、話を一生懸命聞いてくださった。短い時間ではあったが、一生懸命お話をした。
感無量である。
久々の福島県での講演だった。いわき市は、東京からは新幹線ではく特急ひたち、に乗る。
茨城方面から福島県に入る。いわきの先は、広野、富岡、大野、双葉、浪江、原ノ町、
相馬、仙台……東日本大震災のときに被害の大きかった地名ばかりだ。
処理水をめぐって、世のメディアはトリチウムは安全だ、甘く見てはならない、陰謀だ、
中国の手先になるのか、などと穏やかではない。
ただ、そこに地元の人たちの困惑だとか、悲しみの報道がとても少ないのが残念だ。
ある保守系ジャーナリストは、中国に勝つために福島の魚を食べようという旨の意見広告
を出した。一見、地元の人たちに寄り添っているような広告にも思えるが、まったく寄り添
っていないんじゃないか。気持ちを考えていないんじゃないか。
我々は、世界の覇権をめぐって、自国の魚を食べるのか? それはなんか違うだろう。
この違和感、コロナワクチンと似ている。ワクチン接種が世界に後れをとっている! と
政治家たちが騒ぎだし、日本は(当初は躊躇していたはずなのに)結局大量のワクチン購入
を決めた。mRNAワクチンではない自国のワクチンを打っている中国のことを、
「あんなもん打っても効かないよ」と嘲笑していた専門家も当時いた。
しかし、ある知人の在日中国人女性は先日僕にこんなことを言った。
「中国人はほとんどコロナワクチン後遺症はないよ。mRNAをたくさん打たされた日本
がかわいそう」と言っている。現にその中国人女性も、ワクチン3回目接種後、ひどい
帯状疱疹と食欲不振に苦しみ、3か月ほど会社を休んでいた。
世界に負けないように。世界と肩を並べるために。
そこに、市民の生きる尊厳はあるのだろうか? もっと本質にかえってほしい。
今回は、日帰りのため福島の魚を食べられなかったけど、今度は、ちゃんと食べにきたい。
シルバーウイーク前に、東京駅は大混雑。喪服姿の人も多く見かけるが、お盆前だからか
それとも……。
先週、僕の秘書から、「家族が急逝されたので2日ほど休みを取りたい」と連絡があった。
70代、孤独死だったという。以下は僕とその秘書との会話。
「長尾先生が数年前に書かれた『男の孤独死』を読んでいてよかったです。
孤独死は孤独ではない、死ぬときは誰でも一人ですものね。あれを読んでいなければ、
もっと動揺をしていたと思います」
「そうか。それは大変だったね。……ところで、どれくらいで発見されたの?」
「おかげさまで、二日と経っていなかったようです。ヤクルトレディさんが警察に通報して
くれたのです」
この記事は約
NaN 分で読めます(
NaN 文字 / 画像
NaN
枚)