久米信行(裏)ゼミ「大人の学び道楽」
授業や講演では話せないこと。連載やSNSでは書けないこと
毎月第1-4 火曜日発行 vol.150 2023/9/19発行
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5.大人の放課後相談室
Q 行き過ぎた自責思考グセからの脱却
これまでの社会人経験で、物事がうまくいかない場合は、他人のせいにはせずにまずは自分の中に原因を探れと教わりました。
たぶんそのこと自体は間違っていないと思いますが、私に場合は自分を責めてしまい、すべて自分で引き受けてしまい、結果的に仕事が回らなくなり、遅延させてしまいます。
これは私にとって深刻な問題で、「自分が悪い」→「自分がやるしかない」となり、どんどん自分を追い込んでしまいます。
きっと自責と他責の切り分けが極端で、他責かどうかを考えもせずに、何でもかんでも自責にしてしまう考え方が悪いのかもしれません。
新卒の頃に「お前はすぐに他責にするクセを直せ」と言われたことが、頭をよぎり、どうしても脱却できません。
この状況から脱却する方法はないものでしょうか?
東京都/38歳/男性
Q まずは笑顔でリラックス。がんばってもダメな時はダメなもの。ゆるゆる続けていれば、時間が解決してくれることが多いのです。
会社経営の経験がある者として、そこまで仕事を自分事としてとらえ自責の念を抱いてくれる社員がいることに驚きました。そしてありがたいと感じました。
逆に、勤め人時代の若き自分を思い出すと、そこまで立派ではありませんでした。私自身はもちろん上司や同僚も含めて、テキトー(適当ではなく)に仕事をこなしている人も多かったと思うのです。
一方で経営者(特に中小企業のオーナー経緯者)と親しく接していると、自責志向で自力本願の人が多いと感じます。他人を責めても事態が変わらないことを体感しているからでしょう。
ですから、仕事を自分事として考えること自体は、決して悪いことではありません。むしろオーナー経営者に近いマインドをお持ちだと思うのです。
ただし、それだけでは、ご相談の通りツラいですね。
ご参考までに、何かトラブル、それも危機的な状況に見舞われた時に、私がどんな心持ちで対処しているかご紹介しましょう。
ちなみに、危機的な状況とは、経営者時代に10年1度は見舞われたような「会社が潰れるかもしれないと戦慄し覚悟した」ようなトラブルです。
そのようなトラブルに直面した時に、自分の能力不足を責めたり、悲運を嘆く時間はありませんでした。なんとか難局を乗り切ることが第一で、どんな心得で対処していたのか。
ちょうど、毎月、お互いの悩みを深く共有して向き合う経営者勉強会で、似たような質問をみんなで考えました。その時の私の答えを思い出しながら回答いたします。
■心得1 人生において最悪だった出来事と比較する
幸いにして、私は還暦まで生き延びることができましたが、振り返って考えるに「人生で最悪なことは命が脅かされること」です。
私にとって最悪と言える「生命の危機」は、20代後半に訪れました。首都高速をドライブしている時、西新宿出口のカーブで曲がり損ねて大破したのです。時速100キロ近く出していて、ブレーキをかけながら曲がった時に、完全にコントロールを失いスピンしました。そして、ピンボールのように壁に何度もぶつかりながら、ようやくクルマは停まりました。
幸いにも、レカロのバケットシートと6点式シートベルトをしめていたので、九死に一生を得たのです。
それは「生命の危機」だけでなく、私の「物好きな心」も粉々にしました。
ホンダクーペ9という往年の名車を中古で見つけ、半年かけてコツコツと部品を集め取付け、レストアを完成させました。事故を起こしたのは、その完成記念のテスト走行の日だったのです。
一瞬にして半年の努力の結晶が、100数十万円かけた宝物が、大破してスクラップになってしまいました。
さらにショックだったことがありました。この一大事に動転しながら110番に電話したら、「そこは首都高なので管轄外」だと「たらい回し」にされたのです。そして首都高のパトロールに電話してきてもらったら、私の体よりも、高速道路の壁が壊れていないかを先に心配されチェックしていたのもショックでした。
つまり、人生最高の日であったつもりが、自信過剰によるちょっとしたミスで、たちまち自分の命が危険にさらされ、大切なものも無に帰すことを、身をもって体感したのです。さらに私にとっては大切な命にも、身内以外は、あまり関心を持っていないことも悟ってしまいました。
今、思い返しても、一歩間違えば、死んでいてもおかしくない大事故でした(本当にスローモーションに見えたのです。)
最悪な体験ではありましたが、まさに「生きてるだけで丸儲け」だと実感できました。
この大事故に比べれば、その後の、会社倒産の危機にせよ何にせよ、ビジネスの問題など、命が取られるわけではないので大した問題のうちに入りません。
「自分は生かされている」
「どんな試練にさらされてもあの事故よりはマシ」
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