ヒント:直近の業績から見ると、プライベートエクイティ・ファンドであるインテグラルの評価は厳しいと思われる。
株式市場では、売上や経常利益が大きく変動する企業よりも、より安定的に成長していく企業が高く評価されます。そのため、今後のインテグラルの株式市場からの評価は、売上高の7割を占め、比較的安定した収益である●●をいかに拡大し、積み重ねられるか次第といえるでしょう。
独立系プライベートエクイティ投資会社であるインテグラルは、2023年9月20日に東証グロース市場に上場しました。
インテグラルといえば、2015年の民事再生法適用を申請したスカイマークの再生支援を主導し、再生させた実績で有名な企業です。
プライベートエクイティ投資会社の上場は日本初となりますが、株式市場はどう評価するのでしょうか?
今回の記事は、前半でインテグラルの事業の分析と投資の特徴の解説、後半でインテグラルのビジネスモデルや業績を分析し、株式市場からの評価について考察していきます。
インテグラルとは?
インテグラルは、日本国内の上場企業・未公開企業等を対象とした独立系プライベートエクイティ投資会社として、2007年9月に設立されました。
創業メンバーは、M&A助言会社GCA(現フーリハン・ローキー)創業者である佐山展生氏、同じくGCAの創業者の山本礼二郎氏、代表取締役社長として東ハトの再建をした辺見芳弘氏の3名です。
インテグラルは、投資先と同じ目線に立って企業の発展を支援する「日本型プライベートエクイティ・ファンド」を目指しており、出資先企業の経営陣との信頼関係を築き、長期的な投資を行うことで、出資先の企業価値を高めることに重視している投資会社です。
一般的なプライベートエクイティ投資会社は、できるだけ早くファンドの出資者に利益を分配するため、短期的な目標(例:株式の売却等のエグジット)を目指す傾向があります。
そのため、インテグラルの長期的な投資は、他のプライベートエクイティ・ファンドとの差別化ポイントといえるでしょう。
この長期的な投資を実現しているのが、「ハイブリッド投資」と呼ばれる投資手法です。これは、端的に言うと、ファンドからの投資に加えて、プリンシパル投資(同社による自己資金による投資)を並行して行う手法です。
また、後ほど詳細を見ていきますが、インテグラルの投資の特徴として、投資先企業に「資金(ハイブリッド投資)」と「人材(経営支援)」の2軸でコミットメントしていく点があります。
今回の記事では、インテグラルの経営理念である「Trusted Investor=信頼できる資本家」を実現するために、資金と人材の観点からどのようにコミットメントをしていくのか?を注目して見ていきます。
インテグラルのハイブリッド投資を実現する組織構造
次は、インテグラルがプライベートエクイティ投資会社として、独自のハイブリッド投資に取り組んでいくために、どのような組織構造をとっているか、見ていきましょう。
上図は、インテグラルのグループ概要図です。
インテグラルでは、プライベートエクイティ投資会社として、ファンド業務の運用や投資先企業の経営支援等に対応するため、多くの組織を設立しています。
上図のピンク色の囲み内の会社は、インテグラルの連結子会社です。
内訳としては、インテグラルのファンドの運用業務を担当する子会社や、投資関連サービスを提供する機能子会社が存在しています。
その他の子会社は、インテグラルの役職員によるファンドとして、投資事業有限責任組合等も存在しています。
次章では、インテグラルが行っている投資の特徴について、解説していきます。
どのような投資を行うのか?
インテグラルは、株式の未公開会社へ投資するため、投資事業有限責任組合やリミテッド・パートナーシップ等を組成し、運用する事業をしています。
●リミテッド・パートナーシップ
投資ファンドの運営者を通じて、出資者が投資する形態。出資者は投資先の経営には参加せず、出資者の責任は、出資した金額の範囲のみとなる有限責任であることに特徴があります。
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