第764回　アメリカは本気だ、緊張するアジア、2025年5月になにが起こるのか

…━…━…━…━…━…━…━…━…━…━…━… 第764回　アメリカは本気だ、緊張するアジア、2025年5月になにが起こるのか？ …━…━…━…━…━…━…━…━…━…━…━… ▼今回の記事 まず始めに、ウクライナの戦況を簡単に報告する。日本の報道とはまるで異なる内容だ。次にメインテーマとして、アメリカがアジア・太平洋地域で進める中国の軍事的封じ込め策とそれに全面的に協力している日本の危険について書く。最後に、筆者が最近体験したちょと不気味な話を報告する。なにかが2025年5月に起こるという。 ▼ウクライナの戦況 メインテーマを書く前に、簡単にウクライナの戦況を紹介する。日本の主要メディアでは、「ウクライナ軍はゆっくりとだが確実に前進している」と報じられており、ウクライナ軍の反転攻勢が成功しつつあるような印象を与えているが、現実はこれとはまったく異なる。以下に簡単に戦況の要点をまとめた。 ●クリミア、セバストポリ ・9月17日、黒海艦隊の母港であるクリミアのセバストポリをウクライナの巡航ミサイル11機が攻撃した。ロシア軍は8機を撃墜したが、イギリスが供与した巡航ミサイル、「ストーム・シャドー」3機が目標を破壊した。この攻撃により、ドックで修理中だった黒海艦隊の強襲揚陸鑑一隻と、同じく修理中の潜水艦一隻が破壊された。 ・しかし、破壊された船舶は実践配備されたものではなく、修理中のものであったことから、戦況への影響はほとんどないと考えられている。 ●地上の反転攻勢 ・一方、ウクライナ軍が6月4日から実施している反転攻勢はほとんど進展していない。南部、サボリージャ州の集落、ロボティネでは7月28日にロシア軍の第一防衛戦の突破に成功しているが、それ以来大きな進展はない。第一防衛戦を突破したのは歩兵部隊である。戦闘車両は突破できていない。そのため、突破したウクライナ軍の歩兵部隊はロシア軍の標的とされ、平均で毎日300人ほどの死傷者が出ている。 ・他方、ドネツク州のバフムトでは、郊外の高地にある集落をウクライナ軍が占拠した。いまのところロシア軍がこれを奪還する動きはない。 ・北部のハリキュウ州では、ロシア軍の攻勢はない。ロシア軍はウクライナ軍の消耗を待っているように、散発的な攻撃を続けている。 ●10月から天候が悪化、ロシア軍のドローンの進化 ・10月に入るとウクライナでは天候が悪化し、地盤が泥沼になるのでウクライナ軍の反転攻勢は停止する。この時期がやってくる前にウクライナ軍はもう一度猛攻撃をする可能性がある。この猛攻撃によって反転攻勢が成功しなければ、反転攻勢は完全な失敗であったことになる。 ・ロシア軍のドローンはすごい勢いで進化している。いまは、地上から兵士が操縦する「FPV」ドローンが主流だ。ロシア製の進化した「FPV」が膨大な集団となってウクライナ軍を襲う攻撃方法が常態化している。こうした攻撃にウクライナ軍は対応するすべがない。 これが最近の戦況だ。これを見ると、日本の主要メディアの報道が真逆なのが分かる。現実はウクライナ軍の反転攻勢が失敗し、ロシアとの和平交渉しか道がない方向にウクライナは追い込まれつつある。 ▼本気になったアメリカ、中国の軍事的封じ込め それでは今回のメインテーマを書く。アジア・太平洋地域で中国の軍事的な封じ込めに本気になったバイデン政権と、その巻き添えになる日本の現状についてだ。これは主要メディアでも頻繁に取り上げられているが、2023年はまさに転換点となる年だ。現状の厳しさを理解するためにも状況を把握しておいた方がよいので、記事にすることにした。 周知のように、2023年度予算は8月28日の参院本会議で与党などの賛成多数で可決、成立したが、一般会計総額は過去最大の114兆3812億円となった。この増額の中心的なものは防衛費である。防衛費は22年度の当初予算と比べて26％増え、予算全体を押し上げた。政府は5年間で従来の1.5倍の43兆円程度を充てる計画だ。初年度にあたる23年度は前年度から1兆4192億円増額した。近年の前年度からの伸び幅は500億ー600億円程度にとどまっていたのに比べ、これは大幅な増額である。