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vol.195:ファーウェイがカムバック。影響を最も受ける米国企業、中国企業はどこなのか

知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード
  • 2023/09/25
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━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード vol. 195 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ みなさん、こんにちは!ITジャーナリストの牧野武文です。 今回は、ファーウェイのカムバックについてご紹介します。 ファーウェイのハイエンドスマホ「Mate60 Pro」が発売になりました。ご存知のように、ファーウェイは米国のチップ封鎖の影響で、チップを製造することができなくなり、クアルコムから4G対応のチップを供給してもらい、細々とスマホの販売を続けていました。しかし、この5G時代に4Gスマホではなかなか売れません。 ところが、ファーウェイは中国の独自技術だけを使って、Kirin9000Sというチップを製造し、Mate60 Proの発売にこぎつけました。 ファーウェイの久々のハイエンドスマホということで大きな話題になり、セールスも1500万台だとか2000万台だとか景気のいい数字が並んでいます。さらに、iPhone15も発売となり、11月には小米14の発売が予定されています。中国のスマホ市場は、久々に沸いています。 しかし、多くの人が疑問に思うのが、ファーウェイはどうやって米国の技術を使わずにKirin9000Sをつくれたのかということです。ここには、非常にトリッキーな方法が使われています。 今回は、この技術がどんなものであるかをご紹介し、ファーウェイカムバックによってどのような企業が影響を受けるのかをご紹介します。 知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード vol. 195 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ▼目次▼ ファーウェイがカムバック。影響を最も受ける米国企業、中国企業はどこなのか 小米物語その114 今週の「中華IT最新事情」 次号以降の予定 Q&Aコーナー ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ファーウェイがカムバック。 影響を最も受ける米国企業、中国企業はどこなのか ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 今回は、ファーウェイのカムバックとその影響についてご紹介します。 中国のスマートフォン市場が久々に沸いています。言うまでもなく、華為(ファーウェイ)の5Gスマホ「Huawei Mate60 Pro」が発売になったからです。ご存知のように、ファーウェイは米国のチップ封鎖により、最新チップを製造することも、調達することもできなくなり、4G対応チップをクアルコムから購入して、細々と4Gスマホを販売していました。しかし、この5G時代にわざわざ4Gスマホを購入する人は少なく、ファーウェイはシェアを失っていました。 ところが、ファーウェイは自力でのチップ製造に成功をし、Mate60 Proとして5Gハイエンドの世界にカムバックしたのです。ファーウェイは、中国ではハイエンドスマホとして男性を中心に支持をされていて、多くのファーウェイファンが新機種の購入を我慢して古いファーウェイスマホを使い続けていました。それがカムバックしたことにより、注文が殺到しています。 さらに、その後、アップルもiPhone15を発売し、多くのメディアが「どっちが売れるているのか」という話題で盛り上がっています。米国のチップ封鎖により、中国市場ではハイエンド機と呼べるのはiPhoneだけになっていました。サムスンGalaxyは中国では人気がなく、小米(シャオミ)がハイエンド機を販売したもののまだまだ大きなシェアを取ることはできず、選択肢がiPhoneしかないという状況が続いていました。 それが、この9月はMate60 ProとiPhone14が発売になり、さらに11月になるとXiaomi14も発売になります。久々に「選択肢が多くて迷ってしまう」状況になっています。 米国によるチップ封鎖は、中国ではすでに「チップ戦争」とも呼ばれています。元々は、ファーウェイのスマホや通信設備が個人情報を収集している疑いがあるという情報安全保障上の問題から、ファーウェイ機器を米国では使用しない「ファーウェイ排除」から始まりました。ファーウェイ機器が個人情報を“違法に”収集している根拠や証拠のようなものは今になっても出てきていません。iPhoneやAndroidと同じように、サービスを改善する目的で“合法的”、“ユーザーの承諾を得て”収集しているだけです。 しかし、中国には弱みがありました。「国家インターネット安全法」の存在です。この28条には「ネットワークプロバイダは、公安機関及び国の安全機関のため法により国の安全及び犯罪捜査の活動を維持・保護し、技術サポート及び協力を提供しなければならない」と定められています。つまり、実際にそのようなことをするかどうかはともかく、構造として、公安から「国家安全に関する捜査のため、ファーウェイの収集している米国ユーザーの個人情報を提供してほしい」と言われた場合、ファーウェイは拒めないのです。米国からすれば、米国市民の個人情報が中国政府機関に渡る構造になっていることが問題なのです。 さらに、2019年5月には、米商務省の産業安全保障局(BIS)は、ファーウェイをエンティティリストに入れました。ファーウェイに米国の技術を使った製品を輸出する時は、あらかじめBISに許可を得なければならないというものです。事実上の輸出禁止です。これでファーウェイは、自社のSoC(システムオンチップ)=スマホの心臓部のチップ(CPUやGPU、センサー類が一体化されたチップ)を製造できなくなってしまいました。チップを製造するには、米国の技術が使われた設備が必須だったからです。

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