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佐々木俊尚の未来地図レポート 2023.9.25 Vol.774
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【今週のコンテンツ】
特集
「俳句甲子園」から学ぶ、情熱的な外れ値の大切さ
〜〜〜SNS時代の「日本語の作文技術」について考える(第8回)
未来地図キュレーション
佐々木俊尚からひとこと
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■特集
「俳句甲子園」から学ぶ、情熱的な外れ値の大切さ
〜〜〜SNS時代の「日本語の作文技術」について考える(第8回)
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AI時代にも生き残る文章とはどのようなものか。それはAIにも書けるような優等生的、中央値的な文章ではなく、「説得力のある外れ値」です。そしてこの「説得力」は必ずしも、ロジックやファクトだけで支えられるものではありません。情感や熱情というようなパトスも、外れ値を支える大事な要素です。
ここで、その好例を紹介しましょう。「俳句甲子園」を皆さんご存じでしょうか。正式名称は、全国高等学校俳句選手権大会。つまり高校の文芸部などで俳句を詠んでいる生徒たちが、その俳句の質を競い合う全国大会です。
どうやって俳句を競い合うのでしょうか。大会はトーナメント形式で、それぞれの高校は五人チームになり、自信作を一句ずつ呈示する。ここからが面白いのですが、単にその句にプロの俳人の審査員が評価点数をつけるだけでなく、チーム同士でディベートも行い、そのディベートの内容も加点されるのです。
実際の流れはこう。対戦するチームは赤白に分かれ、それぞれのチームの五人は先鋒・次鋒・中堅・副将・大将と、柔道や剣道の団体戦のように呼ばれます。まず互いのチームの先鋒が二人立つ。それぞれの句を読み上げたら、行司が「それでは赤チームの句に対して、白チームのかたは質疑をお願いします」と合図する。白チームのだれかが手を挙げて、質疑を始める。赤チームはそれに対して答える。それぞれの発言は最大30秒で、制限時間を超えると行司から遮られる。
トータルで3分が経つと(決勝だけは4分)、終了となります。攻守を交代して、白チームの句に対して質疑に移り、それも終了したら7人の審査員が審査に移り、赤もしくは白の旗を挙げて、旗が多数の方が勝利。
さて、今年の8月に行われた俳句甲子園の決勝は、東大進学率が高いことで有名な東京・開成と北海道・旭川東の対戦でした。開成は強豪で、昨年までこの大会で三連覇しています。今年は前人未踏の四連覇への挑戦。
その様子は、以下のYouTubeで観ることができます。本当に面白いのでぜひ。
★第26回 俳句甲子園 / 決勝
https://www.youtube.com/watch?v=9mUuB9qoo8I
このなかでも特に注目したいのは、次鋒戦の旭川東から出てきた濱田春樹君です。この濱田君、すごい。
次鋒戦で開成と旭川東が繰り出したのは、それぞれ次の句でした。
「県道の上を国道雁渡る」
「天道是か非か自転車月へ突っ走る」
後者の「天道是か非か」が、濱田君の句です。この句をめぐるやりとりが非常に熱っぽかったので、YouTubeから書き起こし、わかりやすく修正して整えてみました。このやりとりで開成側は次々いろんな生徒が発言していますが、旭川東のほうは濱田君が一手に引き受けています。
開成:「天道是か非か」というのは「天道というものは本当に正しいのか、それとも正しくないのか」という意味だと調べて知りました。「自転車月へ突っ走る」というのは作者の思いがよくわかるなあと思うのですが、その冒頭に「天道是か非か」という重い言葉を置いた意味を教えてください。
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