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【Vol.501】冷泉彰彦のプリンストン通信『24年大統領選、4つのシナリオ』

冷泉彰彦のプリンストン通信
「テレワーク問題、こんなに違う日米の事情」  日本では、ここへ来てテレワークを全面的に中止して、100%オフィス への出勤に切り替える企業が増えています。その一方で、アメリカでは「週 5日のうち、3日出勤で2日テレワーク」というのが今現在の相場となって います。  企業の側は5日ともに出勤してもらいたいという経営者も多いのですが、 5日出勤という条件は「余りに悪条件」なので優秀な人材が来ない、そこで 出勤2日という状況が続いたのを、何とか労使合意に持ち込んで3日にして いるというのが現状です。  私の住む街は、快速の停車する鉄道駅があり、ニューヨークへの通勤圏で すが、駅前の駐車場を見ていますと、「月金はガラガラ」「火水木は満車」 ということで、やはりウォール街などでは週3日出勤で、2日はテレワーク というのが相場だということが分かります。  この労使の綱引きですが、労働者の側で出勤希望を出す人はアメリカの場 合は皆無です。コロナ禍中に確立したワークライフバランスを崩したくない という思いは、幅広く共有されているからです。  その一方で経営の側は、次のような認識です。 1)デイリー業務の生産性は、テレワークのほうが圧倒的に高い。  これはアメリカの場合はゆるぎのない事実として労使双方に理解されてい ます。 2)しかし、与信などにあたって取引先の言動を見極めるとか、自由な雑談 の中からイノベーションのヒントが生まれるなどの理由から、専門職はでき れば対面に戻って欲しい。 3)特にニューヨークなどは、昼間人口が減って経済も治安も悪化している ので、もういい加減戻らないと最後は不動産市場が崩壊してしまう。  という2つの理由からオフィス勤務に戻って欲しいということを主張して います。  その一方で、日本の場合は、 4)昭和感覚の経営者は、テレワークによる「公私混同」を生理的に嫌悪し ており、もう我慢の限界。 5)ビデオ会議やチャットでの生産性向上のノウハウが進まない。 6)教育や他社経験がそのまま生かされる職場が少なく、OJTのマニュア ルも未整備な中では、その場で対面で質問できる環境を若手がむしろ好む。 7)管理職も、対面でないと管理監督できない。  ということがあるようです。ということは、このテレワークができないと いう問題そのものに、日本におけるオフィスワークの生産性向上の手がかり があることが分かります。  なし崩し的に生産性の低いオフィス環境に戻るのではなく、職務の定義を 明確にし、業務の標準化を進めてテレワークの生産性を確保する改革。これ が日本のオフィスには求められているのです。

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  • アメリカ北東部のプリンストンからの「定点観測」です。テーマは2つ、 「アメリカでの文脈」をお伝えする。 「日本を少し離れて」見つめる。 この2つを内に秘めながら、政治経済からエンタメ、スポーツ、コミュニケーション論まで多角的な情報をお届けします。 定点観測を名乗る以上、できるだけブレのないディスカッションを続けていきたいと考えます。そのためにも、私に質問のある方はメルマガに記載のアドレスにご返信ください。メルマガ内公開でお答えしてゆきます。但し、必ずしも全ての質問に答えられるわけではありませんのでご了承ください。
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