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vol.196:中国は海洋放出の何に怒っているのか。日本製品に対する影響は?

知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード
  • 2023/10/02
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━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード vol. 196 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ みなさん、こんにちは!ITジャーナリストの牧野武文です。 今回は、海洋放出にともなう中国の反応についてご紹介します。 このメルマガを読んでいる方は、中国についても関心があったり、よくご存知であるため、日本の報道に違和感を感じている方も多いのではないかと思います。日本の報道の中の中国は「安全であることを科学的に証明しても、危険だ危険だと騒ぎ立て、挙げ句の果てにイタズラ電話をかけるようなことまでする」というものになっています。 おそらくみなさんは、「中国にも中国の理屈があるのではないか」と直観で感じていらっしゃるのでないでしょうか。実際、中国の主張をよく読めば、それなりに納得できる部分もあるのです。 とは言え、現実には、海洋放出を今さら止めることはできませんし、日本の海産物は輸入禁止となり、同時に関係のない日本製品まで避けられる傾向が生じています。日中ビジネスに関わる人としては、先を読んで対応をしていくことが求められます。 そのためには、まず中国がどのような主張をしており、中国人がどのように考えているのかを知る必要があります。残念ながら、この問題に関してはアンケート調査などのような客観的データは存在しません。アンケートをとっても、日本を非難する回答ばかりになってしまいます。ですので、SNSでの情報と知人からの話などを元にし、私が自分のこれまでの知見に照らし合わせて整理をしてご紹介します。そのため、あくまでも個人の見方であり、その正確さがどの程度のものであるかは、みなさんの中で反芻をしながら評価をしていただきたく思います。 今回は、海洋放出に対する中国の反応と、日本製品に対する影響についてご紹介します。 知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード vol. 196 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ▼目次▼ 中国は海洋放出の何に怒っているのか。日本製品に対する影響は? 小米物語その115 今週の「中華IT最新事情」 次号以降の予定 Q&Aコーナー ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 中国は海洋放出の何に怒っているのか。 日本製品に対する影響は? ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 今回は、処理水の海洋放出による日本製品への影響についてご紹介します。 福島原発の敷地内に蓄積されていた処理水の海洋放出が始まり、中国が猛反発をして、日本の海産物の輸入を停止していることはみなさんよくご存知だと思います。また、それに伴い、中国でイタズラ電話を含むさまざまな反応が起きていることもよくご存知だと思います。 この処理水の問題で、日本政府がよく口にするキーワードが「科学的根拠に基づいて」です。「中国側は科学的根拠に基づかない批判をしている」という発言が毎日のようにされています。おそらくこれは、日本側の視点からは「IAEAに安全性レビューをしてもらい、問題がないというお墨付きを得て各種国際法を遵守して行なっているのに、なんで中国はIAEAの安全性レビューを無視して批判をするのか」ということだと思います。 しかし、中国政府や普通の中国人からはまったく別の景色が見えています。中国政府の批判は、「他にも処理方法はあるのに、なぜ他国に迷惑をかける可能性がある海洋放出という方法を選んだのか」という点を批判しています。簡単に言えば、よその国に迷惑をかけずに、自国内で処理できる方法でやってくれという話です。 また、一般の中国人が科学的根拠に基づいていないことを批判するのは酷な話だと思います。彼ら彼女にしてみれば、「日本産食品を避ける」という簡単な行動でリスクから逃れることができるのですから、IAEAのレビューを熟読したり、日本政府や東電が公開しているデータを見るコストはかけません。これは責められないことです。人はいろいろなことを考えて生きていかなければなりませんから、簡単な行動で避けられるリスクについて、難しいドキュメントを読んで考えろというのは無理があります。 日本と中国は、同じものを見ていないがら、まったく違った景色が目に映っています。日本の国内では「海洋放出に反対しているのは中国と北朝鮮だけ」に見えていますが、中国では「世界各国が懸念を表明している」に見えています。日本では「中国は孤立をしている」と見えていますが、中国では「日本は孤立をしている」と見えています。 実際、「海洋放出に反対しているのは中国と北朝鮮だけ」という言い方は、大雑把すぎます。香港は中国と足並みをそろえて輸入禁止措置を始めました。また、理解を示してくれた韓国もあくまでも「容認」であり、以前から行なっている福島県などの8県産の海産物の輸入禁止措置は維持をしています。日本に友好的な台湾も、海洋放出にあたって措置を厳しくはしていないものの、以前から行なっている輸入食品の放射線検査を続けています(台湾は、非常に賢い仕組みを構築していて、私たちも学ぶべき点が多いと思われるので、後ほどご紹介します)。遠い欧州や中東はともかく、アジア太平地域の多くの国はあくまでも「容認」であって、歓迎をしているわけではありません。 今回、日本政府が韓国政府の「容認」を取り付けたことはファインプレーだったと思います。韓国が容認をしてくれたことで、近隣諸国の反応の流れが大きく変わりました。そのために、日本政府は韓国の調査チームを福島に招くことまでしました。しかし、その調査チームの結論も「韓国の海域に対する影響はない」ではなく「影響は限定的」と言い方です。つまり、韓国でも、海洋放出を歓迎しているわけではないのです。

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