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『天幕のジャードゥーガル』第3巻の短評

BHのココロ
  • 2023/10/02
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 今回のメルマガは、先日発売されたばかりのトマトスープさんによるマンガ作品『天幕のジャードゥーガル』(秋田書店、2023年)の第3巻についての短評をお届けしたいと思います。短評といっても、僕はマンガ作品そのものを評価する立場にあるわけではなく、作品に登場する幾つかのカギとなる概念や事柄に脚注をつける程度のことだとご理解ください。  なお、マンガ家のトマトスープさんを特別ゲストに迎えた魔術研の公開講演会のアーカイヴ動画はこちらです:  https://www.youtube.com/live/0zB2oTdRcVU  そもそも『天幕のジャードゥーガル』とは、どのような作品でしょうか?舞台となるのは13世紀におけるモンゴル帝国の宮廷です。主人公のシタラ(のちにファーティマと名乗ります)は、イラン東方の町トゥースで奴隷として学者一家にひきとられます。ペルシア語で「星」を意味するシタラとは、医学者イブン・シーナの妻の名前からとられているようです。  彼女は学者一家の「奥様」(家長の妹にあたります)に仕え、知識や学問の可能性と重要性を学びます。奥様との会話のなかには、数学者エウクレイデスの幾何学書『原論』や占星術師ビールーニーの『占星術教程』などが登場します。なかでも『原論』は、その後の物語全体の展開のなかで重要な働きをします。この学者一家と暮すなかで、シタラは「旦那様」の蔵書から大いに多様な知識を得ることになります。  幸せな暮らしを送っていたシタラと学者一家ですが、あるとき東方からモンゴル軍が襲来し、トゥースの町は占拠されてしまいます。モンゴル軍の指揮官トルイ(チンギス・カンの四男)は、自身の妻ソルコクタニの要望にしたがってエウクレイデスの『原論』をモンゴルに持ちかえろうとしますが、それを阻止しようとした奥様は殺され、シタラもついには捕虜の身となってしまいます。

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