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【Vol.502】冷泉彰彦のプリンストン通信『一寸先は闇、アメリカ政局』

冷泉彰彦のプリンストン通信
「インボイス導入で大混乱、誰の失態なのか?」  制度が変わる時は、いつもそうなのですが、国会に制度改定が提案されて 論戦が行われる際には、国民に対して詳細は説明されません。その代わりに、 実際に法案が可決して制度が実施される時になって大騒ぎになるのです。  例えばですが、監督官庁は広告代理店に多額の税金を払って「ご存知です か?」というキャンペーンをやったりします。また、同時にマスコミもこの 時点になって「混乱だ」とか「困る人が出る」などと騒ぐのです。  ここ20年、いや40年ぐらい同じことの繰り返しと言っても良いと思い ます。消費税の導入、後期高齢者保険、子育て制度、そして軽減税率に今回 のインボイス、いつもそうです。法律を審議している時は、世論を刺激する ような報道は伏せられて、法案が可決成立し実施段階になって「ご存知です か?」キャンペーンを行う、こればっかりです。  主権者をナメているというのもそうですが、これでは民主主義の利点であ る決定への全員参加による合意形成ということが成り立っていないと思いま す。  一体誰が悪いのでしょうか?  1番目は中央官庁の官僚です。彼らは独自の正義感と優越感から、自分た ちが立案した新しい制度は「国のためになる」と信じて疑っていません。で すから、野党議員がいちいち自分たちの提案した法律案にイチャモンを付け たりするのは面倒であり、サッサと法案を通して欲しいと思っているのです。  さらに言えば、中央官庁の官僚は制度を管理するのが仕事であり、実際に 制度変更が実施される場合に困る現場、つまり各自治体や官庁の窓口の人々 がどう困るのかなどには、そんなに関心はないと思います。  また今回のインボイス問題について言えば、財務省としてはそもそも「軽 減税率」などやりたくなかったはずです。それを公明党などがねじ込んでき て、10%に統一すればいいのに8%も残って税率が複数になったわけです。  財務省としては、それで実務が面倒になるなど「知ったこっちゃない」と いう感覚もあるでしょうし、さらに言えば「8%に削減されて減った税収を、 捕捉強化で取り戻す」ことも考えたに違いありません。  2番目は、野党議員です。今回のこともそうですが、行政の窓口がどう困 るのか、それ以前の問題として納税者は、中小事業者はどう困るのか、世間 を知らない議員の多い野党には、問題を聞き出す能力も、聞いて問題の根深 さを理解する能力も欠けているのだと思います。(続く)

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  • アメリカ北東部のプリンストンからの「定点観測」です。テーマは2つ、 「アメリカでの文脈」をお伝えする。 「日本を少し離れて」見つめる。 この2つを内に秘めながら、政治経済からエンタメ、スポーツ、コミュニケーション論まで多角的な情報をお届けします。 定点観測を名乗る以上、できるだけブレのないディスカッションを続けていきたいと考えます。そのためにも、私に質問のある方はメルマガに記載のアドレスにご返信ください。メルマガ内公開でお答えしてゆきます。但し、必ずしも全ての質問に答えられるわけではありませんのでご了承ください。
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