ヒント:楽天モバイルを黒字化するためには、契約回線数の獲得、ARPU(1ユーザーあたりの平均売上)引き上げのどちらも必要である。
もしARPUの改善が見られず、直近の回線獲得数である1ヶ月あたり10万件の契約数増加が継続した場合、約5.5年の期間が必要。
楽天グループは、楽天カード、楽天市場、楽天証券、楽天銀行等のサービスを通して「楽天経済圏」を築き、売上高は1997年の創業以来、26年連続通期増収と右肩上がりに伸びています。
その一方で、近年は楽天モバイルへの先行投資のため、他事業での利益で補えないほどの大きな赤字が続いています。
2023年2月、楽天の三木谷社長は、赤字続きの楽天モバイルについて「23年に単月黒字化を目指す」とコメントしました。
そして、2023年8月10日に行われたFY2023 Q2(2023年4月〜6月)楽天グループ決算説明会の中で、ついに楽天モバイルの黒字化へのシナリオが発表されました。ただ、その内容は、23年内の達成は非現実的であり、先を見据えたものでした。
今回の記事は、楽天モバイルの黒字化の鍵を握る2つの重要KPIに着目し、黒字化までの現実的な年数について3つのケースで試算していきます。
楽天モバイルが再度500万回線突破
2023年9月23日、楽天の三木谷社長は楽天モバイルの500万契約回線突破をX(旧Twitter)に投稿し、「携帯の常識を覆す」という楽天モバイルの目指す世界観を改めて強調しました。
実は楽天モバイルが500万回線を突破するのは、はじめてのことではありません。2019年10月に携帯キャリア市場に新規参入した楽天モバイルは、2022年4月に500万回線を突破しました。
しかし、翌月の5月に、契約者数の拡大に大きく寄与していた「0円プラン」の廃止に伴って回線数が減少したのです。
楽天モバイルは回線数回復のために施策を展開しました。
本格的な法人向け携帯キャリアサービスとなる「楽天モバイル法人プラン」を2023年1月に、また2023年6月からはデータ使用量無制限の「Rakuten最強プラン」の提供を開始しました。
さまざまな施策が成功し、再度500万回線突破したことによって、黒字化への道すじがようやく見えてきたと考えられます。
資料出典元:楽天グループ株式会社 決算資料「CEOグループ戦略プレゼンテーション資料」
気になる赤字金額は?
上図は、楽天モバイルの売上と利益の推移です。
FY2023 Q2(2023年4月〜6月)の楽天モバイル単体の売上は522億円、YoY+13.3%と高い成長率を示しています。
FY2023 Q2(2023年4月〜6月)の営業利益は▲789億円と、前年同期と比べて、372億円の赤字が改善しました。
依然として赤字ですが、継続して赤字額は縮小しており、黒字化への期待が持てる傾向といえるでしょう。
次章では、楽天モバイルがどのように黒字化していくのかについて見ていきます。
ついに示された黒字化へのシナリオ
今回の決算では、楽天モバイルのEBITDA(利払い前・税引き前・減価償却前の利益のこと)ベースでの黒字化シナリオが初めて発表されました。
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