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237回 止まらない地方いじめ

和田秀樹の「テレビでもラジオでも言えないわたしの本音」
北海道の北見市にある病院が突然廃院になったそうだ。 地域の高齢者にとっては地元の病院がなくなることはかなりつらい。 テレビ局と警察がタッグを組んで高齢者から免許を取り上げるので、歩いて行けたり、自転車に乗っていける(これも実は高齢者には危ないのだが)病院にしか通えない人が少なくないからだ。 このメルマガで何度も主張しているように、薬を過剰に飲み過ぎていない限り、高齢者の運転は統計を見てもとくに危ないわけでない。 ただ、飲むと運転に危険な薬はやたらに多い。 抗生物質であれ、風邪薬であれ、通常の血圧の薬であれ、糖尿病の薬であれ、高齢者に出されるほとんどの薬が実は、運転禁止薬リストに入っている。 chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www2.hosp.med.tottori-u.ac.jp/departments/establishment/pharmaceutical/files/53614.pdf 血圧や血糖値を薬を下げることは頭をボンヤリさせるし、最悪意識障害を起こすので、とても危険なのだ。 m3というサイトでは、私が薬を減らして血圧や血糖値を高めにコントロールするように勧めることに「和田医師の言葉を真に受けて、透析、血圧、糖尿管理を継続した結果、心筋梗塞、脳梗塞、心不全等の再発、また死亡した場合、責任は放棄でしょう。ひどすぎます。」と書いている医者もいるが、じゃ、交通事故を起こした場合、彼は責任を取るというのだろうか? 海外では、ほとんど高齢者の暴走事故は問題になっていない。薬が運転に危険なことも知らずに野放図に薬を出す医者のほうがもっと責任を取ってほしい。 ただ、以前も夕張の病院が市が財政破綻して廃院になった際に、各種生活習慣病からみとされている病気で死ぬ人は減り、老衰死が増えたという前例があるから、これを機に無駄な薬をやめることで元気で長生きしてもらうことを祈りたい。 さて、その病院の倒産を伝える情報番組でも、その背景にあるのは地方の医者不足であると伝えていた。 その通りだと思う。 多少、給料が高くても医者は集まらない。 ところが田舎いじめの大好きな霞が関の厚労省の連中は、実現不可能に近い基準を全国一律に押し付け、医者の数が足りない病院を徹底的にいじめ、ベッド数を強制的に減らさせたり、廃院に追い込んだりする。 仕方がないから、大学病院に医者を回してくれと頼むのだが、昔は何百万円か教授にわいろを払って医者を回してもらえたのだが、それが禁止になり、バレると警察に捕まるようになった。そのほうがいいと思うかもしれないが、田舎の大学教授は自分がお殿様と思っているから、別の形のわいろを求める。病院でいちばんきれいな事務職員を人身御供にさせるなんてことがざらにある。 ジャニーズだけを叩くのでなく、医学部教授たちの性強要をもっと叩かないと、地方の病院の女子職員は気の毒だ。我慢しないと医者を回してもらえず、病院にいられなくなるので、通常は泣き寝入りだ。 あと、警察もひどい。 私が35年以上前に、水戸の救命救急センターもある病院に勤めていた頃は、警察も人の命のほうが建前より大事にしていた。家で酒を飲んでいた時に呼び出されて、大急ぎで(つまりスピードを大幅に違反して)かけつける際に、酒臭い息をしてスピード違反で捕まっても事情を話すと「ご苦労様です。先導しましょうか」という態度だった。 今なら許されないだろう。 かくして田舎の患者は医者に来てもらえず、助かる命がどんどん失われていく。 また晩御飯で酒も飲めないのなら、地方に医者がいつかなくなるのも当然だ。 さらに、地方だと高い給料をもらっても金の使い道がないので、ついポルシェとかを買う医者が多いが、警察はそれを目の敵にしてスピード違反で捕まえる。 免許がなくなると地方では仕事ができないので、地域医療を一生懸命やっていた医者が、そういう事情で泣く泣く都会に帰る。 警察の地方いじめがなければ、医師不足はもう少しましになるはずだが、警察に忖度するテレビ局はこんなことは絶対に報じない。 地方分権の時代なのだから県警のトップは地元のたたき上げがなるべきなのだが、霞が関の警察官僚(今は交通畑の人間が出世する)が県警のトップなので地域の事情は顧みられることはない。 厚労省にしても、地方の地域医療型の病院は、高度医療を行うわけでないのだから、もう少し医師数の定員などを柔軟に対応すればいいのだが、それはしない。それどころか医師の働き方改革で、さらに多くの医者を雇わないといけなくなる。 オンライン診療の大幅な緩和とか、ナースプラクティショナーの導入で、医者の数が少なくても病院の存続が許されるようにしないといけないのだが、医師会に忖度して、それも許さない。 地方の人には気の毒だが、霞が関が田舎いじめを続けても、世襲のお殿様に票を入れ続ける罰として、夕張のように病院がなくなるとかえって元気で長生きできることを信じてもらうしかない。もちろん、それでも腰痛もちの人とかには気の毒だが。

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  • 和田秀樹の「テレビでもラジオでも言えないわたしの本音」
  • 世の中のいろいろなことにたった一つしかないと考え、それを信じ込むことは、前頭葉の老化を進め、脳に悪い。 また、それが行き詰った時に鬱になるというメンタルヘルスにも問題を生じる。 ところが日本では、テレビでもラジオでも、○○はいい、××は悪いと正解を求め、一方向性のオンパレードである。 そこで、私は、世間の人の言わない、別の考え方を提示して、考えるヒントを少しでも増やし、脳の老化予防、メンタルヘルス、頭の柔軟性を少しでもましになるように、テレビやラジオで言えない暴論も含めて、私の考える正解、私の本音を提供し続けていきたいと思う。 質問、相談、書いてほしいテーマ等、随時受付。
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