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ドコモが距離を置いていた金融に本腰を入れ始めた 石川 温の「スマホ業界新聞」Vol.534

石川温の「スマホ業界新聞」
-------------------------------------------------------------------------------------- 石川 温の「スマホ業界新聞」 2023/10/07(vol.534) -------------------------------------------------------------------------------------- 《目次》 1.NTTドコモがマネックス証券を子会社化して新NISAに本腰 ----金融経済圏で先行する楽天グループはどう戦うのか 2. ソフトバンクが5G基地局と衛星地球局の干渉を抑圧する技術を開発 ----「周波数の一次利用、二次利用の壁」を取り除くことはできるか 3.グーグルが新製品「Pixel 8シリーズ」を発表 ----早くも気になる廉価版「Pixel 8a」の存在 4.今週のリリース&ニュース 5.編集後記 -------------------------------------------------------------------------------------- 1.NTTドコモがマネックス証券を子会社化して新NISAに本腰 ----金融経済圏で先行する楽天グループはどう戦うのか ------------------------------------------------------------------------------------------ NTTドコモは10月4日、マネックス証券を連結子会社化し、証券業務に本格参入すると明らかにした。これまで、2020年に起きた「ドコモ口座不正利用事件」の影響で、銀行や証券業務とは距離を取っていたが、KDDIやソフトバンクが金融を軸とした料金プランを開始するなど、金融との融合を強化していく中で、NTTドコモとしても心変わりしたのだろう。 2024年に開始される新NISAによるユーザーの「囲い込み」が本格化する。NTTドコモとしては1000万を超える「dカードGOLD」ユーザーがいるだけに、クレジットカードによる積み立て投資信託で大量にポイントを付与することで、新NISA口座のユーザーも一気に増やせる土壌があることは間違いない。 既存3社が金融シフトを進める中、なんとももったいないのが楽天グループだ。本来ならば、楽天証券や楽天銀行で先行しているのだから、もっと楽天モバイルとの連携を深めれば、ユーザーの獲得にも貢献したのではないだろうか。 確かに、楽天グループ全体としては国内株式の取扱手数料を無料にするなど、勢いのある楽天証券だけで、ユーザーを獲得できれば良いのかも知れない。ただ、もうちょっと出し惜しみをして、「楽天銀行ユーザーのうち、楽天モバイルも契約していたら、国内株式手数料0円」という施策であれば、楽天モバイルのユーザー獲得に貢献できたのではないか。 もちろん、SBI証券との競争環境もあり、「楽天モバイルユーザー限定」にはできなかったのだろうが、もうちょっと、楽天証券と楽天モバイルの融合というか、「グループの一体感」が欲しいところだ。 ただ、銀行や証券で、モバイルユーザーに対して、優遇施策を展開しようと思うと、モバイル側が優遇に関する負担を強いられることになるので、いまの楽天モバイルにはかなり厳しいのかも知れない。 とはいえ、指をくわえてみていると、auカブコム証券やPayPay証券、さらにはマネックス証券に美味しいところを持っていかれるのではないか。 既存3社で、通信と金融を融合したプランが一般化していけば、それこそ、ユーザーの流動性が下がるのは間違いない。金融商品にも手を出すユーザーはお金に余裕があり、値下げプランにはなびかない人たちだろう。 やはり、キャリアとしてはそうした優良顧客をガッチリと抑えることが重要であり、どちらかというと値下げプランになびき、あちこちと移動する人たちを無理して獲得する必要はなかったりもする。 既存3社が金融を強化することで、ユーザーの流動性は落ちる。これまで、2年縛りや解除料の見直しなど、総務省がユーザーの流動性を上げようと努力してきた数々の施策は水泡に帰すことになりそうだ。 -------------------------------------------------------------------------------------- 2. ソフトバンクが5G基地局と衛星地球局の干渉を抑圧する技術を開発 ----「周波数の一次利用、二次利用の壁」を取り除くことはできるか -------------------------------------------------------------------------------------- ソフトバンクは10月6日、「5G基地局と衛星通信地球局の下り回線の電波干渉を抑圧する 「システム間連携与干渉キャンセラー」の試作装置を開発、室内での実験に成功」というプレスリリースを出しつつ、メディアに説明会を開催した。 5G向けに3.9GHz帯が各キャリアに割り当てられているが、Cバンドでもあるため、衛星通信の地球局との干渉が問題となっている。地球局から数十キロの範囲で5G基地局を建てるのが難しく、5Gエリア展開の足かせとなっているのだ。 ソフトバンクでは、5G基地局から発出した信号を分岐させ、「5Gレプリカ信号」として光ファイバー網で使って、地球局の近くに設置したキャンセラーに転送。衛星通信アンテナは衛星信号と5G干渉信号の2つを受信している状態であるが、キャンセラーに転送されてきた5Gレプリカを信号5G干渉キャンセル信号にして合成する事で、衛星信号のみを取り出すことができた。 もともと、この技術は5.5Gや6Gに向けて、「ネットワーク連携による同一周波数共用三次元空間セル構成」の研究開発を世界に先駆けて行うことが発端であり、目指すゴールは「周波数の一次利用、二次利用の壁」を取り除くことにあるようだ。 つまり、今回は3.9GHzでの利用となっているが、将来的にはどの周波数帯でも応用できるような技術とされている。 ここで取材して感じたのは、将来的には衛星通信だけでなく、地上デジタル放送と携帯電話の周波数帯共用なんてのも、技術的にあり得るのではないかという点だ。 先日、NewsPicsで行われた「緊急生配信 どうなる楽天!? 徹底分析」で、池田信夫先生が、やたらと「地上デジタル放送で使われている周波数帯を電波オークションにかけてキャリアに割り当てれば良い」という話をされていたが、やはり放送局に割り当てられている電波を整理し、キャリアに渡すためのオークションをするというのは、様々なところから反発が予想され難しいのではないか。 しかし、ソフトバンクが開発したような技術では難しいかも知れないが、地上アナログ放送の周波数帯と携帯電話の周波数帯を共用できるような技術が開発されれば、1次利用と2次利用の壁が取り払われ、一気にキャリアにもプラチナバンドが解放されることになる。 6Gに向けてミリ波やテラ波が割り当てられることになっていくだろうが、現状のミリ波を見ていても、活用にはかなり限界があるように思える。 それであれば、扱いやすい地上デジタル放送向けの周波数帯をいかに放送局から「奪う」のではなく「共用させてもらう」方向に持って行き、通信キャリアも利用できる環境にしていくことが急務だろう。 実際、KDDIがダイナミック周波数共用活用で、放送事業者が1次利用者として使っている2.3GHz帯を使えるようにしてしまった。 もはや電波の利活用は電波オークションだけが正解ではない。かつては1つの用途にしか割り当てられなかった周波数帯が技術の進化や制度設計によって「共用」が可能となっているだけに、そうした仕組みを真剣に検討していくべきだろう。

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