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週刊Life is beautiful 2023年10月10日号: Meta Connect 2023、ノーベル賞

週刊 Life is beautiful
今週のざっくばらん Meta Connect 2023 社名をFacebookからMetaに変更し、「Metaverseに投資する」と宣言して以来、若干迷走しているように見えたMetaですが、今年の「Meta Connect 2023」で発表した「Quest 3」と「Meta Ray-Ban Smart Glass」により、その方向性がより明確になったように感じます。 さらに、CEOのMark ZackerbergがLex Fridmanと行ったMetaverse上のインタビューは、AR/VRを使ったコミュニケーションのあり方の将来を垣間見せてくれた、という意味で、エポックメーキングであり、 Metaを見直してしまいました。 「Quest 3」は、Questの3世代目のAR/VRデバイス(Quest Proを含めれば4世代目)です。「Quest 2」と比べて、ARを重視した設計になっている点と、$1,499という値段設定だった「Quest Pro」から多くの機能を引き継ぎながら、$499という価格に抑えて来た点は、高く評価出来ます。 $3,499という価格に設定された、AppleのVision Proとは明かに違うセグメントを狙った商品ですが、まだ「ニッチ」な存在であるAR/VRグラスが、今年から来年にかけて、より多くの人に使われるデバイスになるかどうかは、「Quest 3」の成功にかかっていると言えます。 AppleのVision Proの発表を見た結果「VR/ARグラスが欲しいけど、$3,499は高すぎる」と感じた人が「Quest 3」流れるという、Appleにとっては皮肉な状況になる可能性は十分にあります。 一方、ソニーは、PlayStation VR2を$549.99で発売しましたが(今年2月)、あくまでPlaysation5の付属品というポジショニングであり、単体で動くQuest 3とは直接の競合にはなりません。PlayStation VR2を購入する人は、「Playstation5向けのゲームを没入感を持って遊びたい」もしくは「VRゲームもたまには遊んでみたい」人たちであり、純粋に「VR/ARゲームを遊びたい」と考えるQuestユーザーとは異なります。 2023年第一四半期のVR/ARグラスのマーケットシェアは、Metaが47.8%、Sonyが35.9%という寡占状態です。今後の市場を予想することは簡単ではありませんが、単体で動くQuestの方が、伸び代が大きいと私は見ているので、一年後には、Metaがさらにシェアを伸ばして60%近くの市場をとっていても不思議はないと思います。 Quest向けのアプリケーションの市場は、1年間で、$1.5billionから$2billionに上昇しており、そのさらなる上昇には、「Quest 3」が重要な役割を果たすことは明確です。私がMark Zackerbergの立場にいれば、次の一年で$3billionの市場に増やすことを目指すだろうと思います。ちなみに、Nintendo Switchの今年のゲーム市場は、$38.2billionで、まだ20倍の開きがあります。 ちなみに、MicrosoftのXbox Cloud Gamingが「Quest 3」上で遊べるという発表がありましたが、単に2次元ディスプレイを3次元空間中に表示するだけ、というのが少し残念です。元は3Dのゲームなのだから、少なくとも左右の目に異なる映像を見せることにより、より没入感を増すことぐらいはして欲しかったと思います。 私は第一世代のQuestのみ持っていて、「Quest 2」は購入しませんでしたが、「Quest3」は購入しても良いと考えています。 「Meta Ray-ban Smart Glass」は、第二世代のものです。スマートグラスは、Google Glassの失敗以来、市場からはあまり好意的に見られていませんが、今回のMetaによるデモは、そのネガティブなイメージを払拭するものになりました。 特に、マルチモーダルなAI(テキストだけでなく、画像や映像も処理できるAI)と組み合わせることにより、目の前に見えているものを画像で検索したり、海外旅行の際に標識を翻訳するなど、スマートグラスが「一度体験したら、二度とない生活は送れない」ぐらいのインパクトを持つデバイスになりうることを見せてくれたという意味でも、素晴らしいと思いました。 防水のモデルが出たら、すぐにでも購入して、ハワイでウォータースポーツをする際に使いたいところです。特に、スタンディング・パドル(大きめのサーフボード上に立って、1本のパドルを操って水面を移動するスポーツ)をしている時、イルカとか鯨に出会った時には、写真を撮りたいと思うことが多いので、こんなデバイスは最適です。 3番目のLex FridmanによるMark Zackerbergのインタビューは、写真だけだと良さが伝えにくいのですが、世界初の、リアリスティックなアバター同士のビデオ会議です。 まずは、それぞれが、前もってラボで数時間かけてさまざまな表情を撮影した結果、表情を含めた頭の3Dデータを作っておいたそうです。そして、実際の会議の際にはそれぞれがQuestヘッドセットを装着し、ヘッドセットのセンサーを使って表情を読み取った結果と音声だけを送信し、あたかも相手が目の前にいるようなリアリスティックな会議を可能にしています。 映像を送っているわけではないので「ビデオ会議」ではなく、「3Dアバター会議」とでも呼んだ方が良いのかも知れません。 これまで、Metaは、アニメ調のアバターを使った会議サービスを提供して来ましたが、それは「遊び」でしかなく、それが(私も含めた)多くの人に「役に立たない」と言わせて来ましたが、今回のサービスはビジネスにも使える、本格的なもので、高く評価出来ます。 私はLex Fridmanのpodcastを毎回楽しみに聴いていますが、彼はリモートのインタビューはしないことで知られています。目の前にいる相手と親密に話すことが重要だと考えているからです。そんなLex Fridmanが、リモートでのインタビューに応じ、「こんな素晴らしい体験は今までしたことがない」と発言しているのです。 ちなみに、Mark Zackerbergによると、このサービスは、Quest3向けに提供される予定で、開発のネックとなっているのは、3Dスキャンの部分だけだそうです。今回のようにラボに出向いて数時間でスキャンする必要があるのでは、多くの人に使ってもらうことは出来なので、スマホでスキャンしただけで、十分なクオリティの3Dモデルを作ることを目指して開発中だそうです。

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