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高野孟のTHE JOURNAL Vol.621 2023.10.9
※毎週月曜日発行
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《目次》
【1】《INSIDER No.1227》
板野潤治『明治イデオロギー』が指摘する北一輝の明治
維新理解の先駆性/「民権思想」を遡る・その6
【2】《CONFAB No.587》
閑中忙話(10月1日~7日)
【3】《FLASH No.535》
際どい交渉プロセス 日中国交回復にこぎ着けた周恩来
と田中角栄の丁々発止/日刊ゲンダイ10月5日付「永田
町の裏を読む」から転載
■■INSIDER No.1227 23/10/09 ■■■■■■■■■■
板野潤治『明治イデオロギー』が指摘する北一輝の明治
維新理解の先駆性/「民権思想」を遡る・その6
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このシリーズの前回(No.1222)では、半藤一利『幕
末史』を取り上げ、薩長土肥は文化を持たない蛮族で、
武力で将軍を倒したのはいいけれど次にどんな国家社会
を建設するかの青写真も設計図もヴィジョンも何もな
く、従って明治の最初の10年間で彼らがやったこととい
えば、天皇の軍隊による軍事優先国家の樹立でしかなか
ったことを指摘した。
同じことを歴史家の板野潤治『明治デモクラシー』
(岩波新書、05年刊)は、北一輝を引用しながら次のよ
うに述べている。
●「下からの民主化」努力の伝統
▼明治維新が、民主主義に向けての準備を欠いた、早産
した近代革命であることを指摘したのは、日本のファシ
ストとして有名な北一輝である。
▼1880年代の自由民権運動も、……日露戦争後の第1次
「大正デモクラシー」も、第1次大戦後の第2次「大正
デモクラシー」も、さらに日中戦争直前の、筆者が「昭
和デモクラシー」と呼ぶ社会民主主義勢力の躍進も、み
な「下からの努力」によって起こったものだった。この
ような下からの民主化への努力を無視して、体制側の歴
史だけをつなげていけば、日本近代史は「上からの改
革」ずくめの歴史になる。「上からの封建制の打破」
「上からの工業化」「上からの立憲制」「上からのファ
シズム」そして「占領軍による上からの民主化」と。
▼このような「上からの史観」は、事実に反している。
しかし、そのような史観を繰り返して注入される
と、……何時の間にか、われわれに欠けているのは「下
からの自前の民主主義の伝統」だと思い込んでしまって
いるのではないか。
▼今日のわれわれは、自国の過去100年以上にわたる民
主主義思想と運動を、連続した、累積的な伝統として再
編成する必要に迫られている。……(以上、同書「はじ
めに」)
ご記憶かどうか、本シリーズ第1回では「明治以来の
思想的・政治的な対抗軸としては『国権vs民権』が本源
的」だったのではないかとの問題意識から、「国権側の
勝利の歴史」の裏側にある「民権主義の連綿たる歴史」
を探る旅に出てみたいと述べたのだったが、そのことを
板野は「上からの史観と下からの史観」と表現している
のである。
●北一輝は社会民主主義者だった
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