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今昔物語2

ドクター畑地の診察室
ドクター畑地の診察室213.2023.10.15. 現役呼吸器内科、総合内科専門医 畑地治です。 世の中に「○○飲んだらすべての病気が治った」「○○制限食をとったらすべての人が健康になる」等、出鱈目情報が溢れています。現代医療の特徴は精密医療で万人に効くような治療はありません。治療方法は個人によって全く違います!おそらく日本で一番多くの呼吸器疾患患者(肺癌、喘息、COPD、肺炎など)を診療する専門医が、最先端の精密医療を解説&ネットでは出し辛い医療や治療の裏側も配信! https://zipangu-management.co.jp/culture_000/hataji/ 三重県出身 自治医科大学卒業後、僻地診療、三重大学勤務を経て、呼吸器内科医師となる 松阪市民病院院長 診療の傍らFM三重で「肺、おさむに聴け!radioを聴いてらんらんらん(lung lung lung)」という毎週月曜日放送の番組を担当 https://fmmie.jp/program/getsumoku/hiosamu.php ***************************** 今昔物語 2  喘息の治療の中心は吸入薬です。吸入薬にも色々ありますが、発作時だけではなく、長期的に喘息の状態を改善させる吸入薬が使われています。例えば、吸入ステロイドがもちろん中心ではあるのですが、1種類の気管支拡張剤と吸入ステロイドが同じになった薬(ベータ刺激薬と吸入ステロイドが同じになった薬でICS/LABAといいます)に加え、最近では2種類の気管支拡張薬と吸入ステロイドが同じになった薬(ICS/LABAに加えて抗コリン薬が一緒になっており、1種類のデバイスに3種類の薬剤が入っていることから、シングルインヘラートリプルセラピーの頭文字をとってSITTと言うことが多いです。)が上市されていることから、喘息患者さんのコントロール状況もかなり良くなりました。吸入ステロイドは長期間使用しても人体に与える影響は少ないため、比較的安全に使用することができます。  ところが、吸入薬を処方しているにも関わらず、喘息のコントロール状況が良くない方はおよそ17%程度いらっしゃると言われています。しかし、実際問題この17%の方が全て重症喘息と言うわけではなく、吸入をきっちりすれば17%の内の13%の方はコントロールが良くなると言われており、そういう意味から考えると、本当の意味での吸入薬をしっかり使用しても、なかなか治らない重症喘息の方は4%程度であるといえます。  さて、この重症喘息の方に対しては、従来ですと、内服ステロイド(注射用のステロイドを使用することもありました。)以外治療方法はありませんでした。内服ステロイドは、効果的ですが、吸入ステロイドと違って、将来的にいろいろな副作用が出現してきます。例えば、糖尿病になったり、いろいろな感染症に罹患しやすくなったり、骨粗しょう症をきたしたりします。また、ステロイドの総投与量が9gを超えると、明らかに大腿骨頭壊死が起こりやすくなると言われています。  喘息が悪化した際には、ステロイドバーストと言う治療を行います。短期間ステロイドを投与するわけです。多くの場合3日程度投与すると喘息は良くなります。長期に内服しないで短期だけの使用ですから、体にそれほど悪影響は無いかと考えがちですが、ステロイドバーストが年間2回以上になると、明らかに上に書いたような副作用が将来的に発現してくる可能性が高くなると言われています。  平均寿命が80歳を超えてきた長寿社会です。従来ですと、目先の症状を取ることに主眼をおいた治療がされていましたが、今はそれだけでは不十分です。目先の症状を取るだけではなくて、将来的に健康寿命を延ばしていく治療を行っていかなければいけないわけです。従来ですと、目先の喘息の苦しみから解放するために、重症喘息の患者さんにステロイドを投与していました。ステロイドは安価ですし、全てを否定するわけではありませんが、しかしながら、このような治療を行うと、将来的に禍根を残すことになりかねません。  世界的な喘息治療ガイドラインであるGINAには、「喘息患者に対するステロイドは最終手段にせよ」と記載されています。なぜなら、重篤な副作用が将来的に起こってくる可能性が高いからです。  最近喘息に生物学的製剤と言う注射剤が使用可能となりました。生物学的製剤を使うことにより、重症喘息の患者さんのコントロールは明らかに良くなります。ステロイドの減量効果や、増悪の抑制効果に加えて、自覚症状改善したり、呼吸機能を良くすることも可能です。内服でステロイドを使うよりもむしろ効果は高い位です。ウイークポイントは非常に高価な薬剤であることですが、しっかりと社会制度を使用することにより、多くの場合使用することが可能になります。  重症喘息でお悩みの方、今はもう内服ステロイドで治療する時代ではありません。しっかりと生物学的製剤を使って、将来的にも合併症を起こさない治療を行うようにしましょう。 ***************************** ドクター畑地の診察室213.2023.10.15号 毎週日曜日お昼に配信予定です。 次号は2023.10.22.です。 お問合せ、感想などはコチラまで zm.magumagu@gmail.com 畑地 治 https://zipangu-management.co.jp/culture_000/hataji/ 三重県出身 自治医科大学卒業後、僻地診療、三重大学勤務を経て、呼吸器内科医師となる 松阪市民病院院長 https ://mie-matsu-kokyuki.mars.bindcloud.jp/ https://www.facebook.com/mch.respiratory.center/ 診療の傍らFM三重で「肺、おさむに聴け!radioを聴いてらんらんらん(lung lung lung)」という毎週月曜日放送の番組を担当 https://fmmie.jp/program/getsumoku/hiosamu.php ***************************** ★お知らせ★ 好評発売中『ドクター畑地の診察室』バックナンバー 1ヶ月分を220円で購入できます。気になった号がある方はぜひチェックしてみてください! ◆2023年09月 https://www.mag2.com/archives/0001688238/2023/09 2023/09/24 素人がNIKEのトレーニングシューズを履いたら早く走れるか 2023/09/17 臨床研究、創薬支援センター発足

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