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【Vol.504】冷泉彰彦のプリンストン通信『ガザ情勢と米政局の関係』

冷泉彰彦のプリンストン通信
「追悼 谷村新司氏」  谷村新司氏の訃報に接しました。ブルースを下地に、シャンソンと演歌を 重ねた独自のスタイルは、多くの人の記憶に残るのだと思います。日本の大 衆音楽に、非常に見える形で「うたの揺れ」という概念を持ち込んだのは、 非常に大きな功績だと思います。  それにしても、大変な苦労人でありながら、心の奥底は自己流のユーモア で包み隠してしまう人でした。若い時から生と死の問題には立ち向かってい たこともあり、74という享年は早すぎるものの、不思議な平穏を感じさせ るのも事実です。  谷村氏の作品ですが、時折、日本という国とその文化の持つ、絶望的な闇 を覗かせることがありました。そのくせ、その闇を隠すような処理がされて いるのが、プロの仕事でした。また、闇そのものには対峙しないというのが、 美学でもあり、矜持でもあったのだと思います。その点は否定はできないも のの、勿体なかったという思いは消えません。  そのような中で、『いい日旅立ち』というのは、その闇が隠しても隠して も滲み出てしまう楽曲だったと思います。この中に出てくる「帰らぬ人」 「待っている人」というのは、どう考えても決して「いい日」に旅立ったの ではないし、どんなに旅をしても「探す」ことはできない、そして会えない ことが分かっていても「せめて」旅に出る・・・そのような歌だからです。  もっと言えば、日本の近代における人口移動とは悲劇である、そういう歌 であると思います。闇というのはそういうことです。そんな闇を描き出して おいて、ご自身は不思議な平穏を感じさせつつ旅立っていったというのは、 やはり大人物であったのでしょう。

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  • アメリカ北東部のプリンストンからの「定点観測」です。テーマは2つ、 「アメリカでの文脈」をお伝えする。 「日本を少し離れて」見つめる。 この2つを内に秘めながら、政治経済からエンタメ、スポーツ、コミュニケーション論まで多角的な情報をお届けします。 定点観測を名乗る以上、できるだけブレのないディスカッションを続けていきたいと考えます。そのためにも、私に質問のある方はメルマガに記載のアドレスにご返信ください。メルマガ内公開でお答えしてゆきます。但し、必ずしも全ての質問に答えられるわけではありませんのでご了承ください。
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