ドクター畑地の診察室214.2023.10.22.
現役呼吸器内科、総合内科専門医 畑地治です。
世の中に「○○飲んだらすべての病気が治った」「○○制限食をとったらすべての人が健康になる」等、出鱈目情報が溢れています。現代医療の特徴は精密医療で万人に効くような治療はありません。治療方法は個人によって全く違います!おそらく日本で一番多くの呼吸器疾患患者(肺癌、喘息、COPD、肺炎など)を診療する専門医が、最先端の精密医療を解説&ネットでは出し辛い医療や治療の裏側も配信!
https://zipangu-management.co.jp/culture_000/hataji/
三重県出身 自治医科大学卒業後、僻地診療、三重大学勤務を経て、呼吸器内科医師となる
松阪市民病院院長
診療の傍らFM三重で「肺、おさむに聴け!radioを聴いてらんらんらん(lung lung lung)」という毎週月曜日放送の番組を担当
https://fmmie.jp/program/getsumoku/hiosamu.php
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非結核性抗酸菌症
皆さん、こんな非結核性抗酸菌症と言う病名を耳にすることが多いのではないでしょうか?昔はほとんど聞かなかったこの名前、この病気の患者さんが年々増加してきています。
抗酸菌には大きく分けると3種類あり、結核、らい、非結核性抗酸菌というふうに分けることができます。結核とらい以外の抗酸菌のことを、非結核性抗酸菌というわけです。なぜ、抗酸菌という名前がついたのか、顕微鏡検査をするとき、細菌を染色するわけですが、酸によっても脱色されないので抗酸菌と言うわけです。よくある誤解ですが、結核をはじめとする抗酸菌を検査するときに、喀痰の代わりに胃液を用いることがあります。胃液のような強い胃酸中でも生きていけるから、抗酸菌と言う名前がついたわけではありません。
さて、結核と簡単な違いをお話ししましょう。結核菌は人と一部の動物の中でしか発育しませんが、非結核性抗酸菌は、広く自然界に存在する細菌で、特に水回りなど、湿った環境で存在していることが多いとされています。非結核性抗酸菌の中でも、人間に感染する代表的な菌は、マイコバクテリウムアビウムと言う細菌とマイコバクテリウムイントラセルラーと言う細菌で、この2つを合わせてMAC症と呼ぶこともあります。MAC症は非結核性抗酸菌症の中の9割を占めますので、このMAC症についてお話ししていきたいと思います。
結核は人から人へと伝染する細菌ですが、MAC症は原則人から人へと伝染しません。まず、空洞を伴う胸部異常陰影を発見した際には、抗酸菌感染を疑い、顕微鏡で抗酸菌がいるかどうか喀痰検査を行いますが、抗酸菌+の際に、結核なのかMAC症なのか鑑別することは非常に大切です。なぜなら、入院する際、結核ならば個室管理や感染対策が必要ですし、MAC症であるなら不要だからです。
昔は結核で大勢の方が亡くなりました。結核に有効な抗菌薬がなかったからです。結核は放置すると3年から5年で半数の方が亡くなる病気です。MAC症はどうでしょうか。多くの場合、放置しても3年で命に関わる状況になることはありません。昔は非結核性抗酸菌症は治療しないことも多かったわけです。ところがMAC症、放置すると次第に悪化してきます。おおよそ結核の1/3から1/4程度の速度、すなわち、10年から20年かけて進行してくることが多いわけです。進行した時の症状は結核進行時と同じで、咳嗽や喀痰、呼吸困難に加え、喀血を繰り返したり、体力が低下し、痩せが進行してくるわけです。
さて、肝心の治療はどうでしょうか。結核については、抗結核薬を半年間内服すればほぼ治癒します。ところがMAC症は薬が効かないことも多く、しっかりと治療しても3割位は除菌できないと言われています。治療期間も、除菌確認後最低12ヶ月は投与が必要で、結核に比べて長くなることが特徴です。そのため、最近では非結核性抗酸菌症に対する新しい薬が上市されましたし、開発中の薬もあります。また機会をみて、薬の話はしたいと思います。
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ドクター畑地の診察室214.2023.10.22号
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次号は2023.10.29.です。
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畑地 治
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