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【Vol.505】冷泉彰彦のプリンストン通信『ガザ情勢と中東問題、3つの謎』

冷泉彰彦のプリンストン通信
「日本の国是はどうして中立なのか?」  今回のイスラエル=ハマス戦争において日本は中立の立場を取っています。 これに対しては、G7の中では孤立しているとか、テロリストに理解を示す のはおかしいなどという批判が、日本国内にもあるようです。  ですが、この「中東問題には中立」というのは、日本の国是です。それも 戦後の、特に60年代以降の日本の強い、そして一貫した外交方針ですので、 このことへの理解が薄くなっているのは問題です。  この問題に関しては、日本は非常に特殊な立場です。3つの要素があると 考えることができます。  1つは、資源のない日本は産油国との関係を良好に保たないと、国家衰亡 の危機に追い詰められるという問題です。1979年のイラン革命で三井物 産はイランでの石油プラントのプロジェクトで大打撃を被っても、撤退せず、 プロジェクトのお葬式をキチンと出してイランとの関係を保ったのがいい例 です。  例えばですが、アフガン戦争や、イラク戦争において、アメリカの主導す る多国籍軍に参加していても、とにかく実態としては水資源確保やエネルギ ー輸送など、限定的な業務に限っていたのもこの問題があると思います。こ れは当時の民主党などが「特措法」に反対した、つまり一国平和主義の世論 に配慮した決定という面も確かにあります。ですが、日本の外交方針に即し て、とにかく中東では行動に配慮するということもあったと思います。  現状は、70年代とあまり変わりません。原油高に加えて、円安が日本を 直撃しています。安倍政権時代とは条件が格段に違います。また、柏崎刈羽 などの原発稼働もできない中で、化石燃料依存の体質は改善できません。そ んな中では、どうしてもアラブの産油国との関係を良好に保つというのは、 国策としての生命線になってしまうのです。  2つ目は、その具体策としてはるか昔、パレスチナがPLOの武闘路線を 放棄して以来、具体的には1993年のオスロ合意以降の状況において、日 本はパレスチナの重要な経済的スポンサーになっています。つまり、アラブ の大義である、パレスチナの存在を具体的に応援することにより、アラブ圏 との関係を良好に保とうというのです。  勿論、この行動を利害計算の結果ということはできます。ですが、毎年巨 額の援助をしてきた中では、日本の支援というのはパレスチナ国家において、 非常に重要な存在になっているのもまた事実です。今回、上川外相がガザ地 区の人道危機に対して1000万ドル(約15億円)の支援を発表しました が、これも過去の経緯からは当然のことだと思います。  3つ目は、イスラエルに対する負の歴史です。(続く)

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  • アメリカ北東部のプリンストンからの「定点観測」です。テーマは2つ、 「アメリカでの文脈」をお伝えする。 「日本を少し離れて」見つめる。 この2つを内に秘めながら、政治経済からエンタメ、スポーツ、コミュニケーション論まで多角的な情報をお届けします。 定点観測を名乗る以上、できるだけブレのないディスカッションを続けていきたいと考えます。そのためにも、私に質問のある方はメルマガに記載のアドレスにご返信ください。メルマガ内公開でお答えしてゆきます。但し、必ずしも全ての質問に答えられるわけではありませんのでご了承ください。
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