キャッチ・アンド・リリース
「彼女から別れの連絡が来ました。今から少しだけ電話してもいいですか」
神妙な顔の同居人です。水族館の帰りにホテル打診したら『付き合わないとダメ』と言われたので、『じゃあ付き合おう』と交際した女性からの連絡でした。その後もやり取りしていたそうですが、会うことはなくお別れです。ちなみに、私はこれから友人と飲みに行きます。行き先は決まっておらず、とりあえず私の家に集合して決めることになっています。約束の時刻まであと五分です。
「今からかけます」
同居人が別れ話をする間、私は玄関のドアスコープから外の様子を覗いていました。ピンポンが鳴ると都合が悪いからです。ドアスコープを長時間のぞく経験はなかったので、右目がつりそうです。ここがのぞき部屋マドンナなら良いのですが。友達が来たら素早くドアを開けなくてはならない。ピンポンを鳴らされるか不安でしたが杞憂に終わりました。
「電話終わりました。ちゃんとお別れができました」
3分でした。同居人がいいます。
「ちょっとクイックルワイパーをかけてもいいですか?」
どうぞかけてください。それで楽になるなら。ワイパーをかける彼に別れの理由を聞くと、一言で返ってきました。
この記事は約
NaN 分で読めます(
NaN 文字 / 画像
NaN
枚)