2023年 43号 【長尾和宏の痛くない死に方】
長尾和宏です。
今週は配信が遅くなり申し訳ありません。
昨日の尼崎トーク&ライブで燃え尽きました。
久しぶりの尼崎。旧・長尾クリニック(現・三和クリニック)の時代はいつもいつも
お世話になっていた尼崎アルカイックホール。久しぶりにこの建物に来た。
なんだか懐かしい。久しぶりの再会。仲間達の顔。友人の顔。患者さんの顔……。
「凱旋公演ですね!」なんて言われたが違う。凱旋は、闘いに勝った者が帰ることを指す。
阪神の凱旋パレードとかね。だから僕はガイセンではありません。ただのフーテン公演です。
フーテン医者になった僕に来てくれた皆さま、ほんとうにありがとう!!!
『長尾和宏 トーク&ライブ 命を語り、愛を歌う』が無事終了いたしました。
前半は、関本雅子さんのお話。そして関西ではおなじみ、MBS人気アナウンサーの
子守康則さんも「終活」のお話で登場。
僕自身、関本剛先生が昨年亡くなってから初めて、剛先生を看取った雅子先生のお話を聞
いた。剛先生が亡くなって、もう一年半が経ってしまった。
長尾クリニックが三和クリニックになる少し前、2023年5月に、関本クリニックは、
「かえでホームクリニック」と名前を変えた。関本先生は院長職から顧問職となった。
今まで4000人以上の患者さんを在宅医として看取ってきた僕の大先輩。
しかし、どんなにたくさんの患者さんを看取ってきたって、自分の家族を看取る覚悟がある
か? と問われれば、僕はできない。
ましてや、最愛の子どもが先に逝くことがわかって看取ることなど。
だから怖くて、この日まで僕は、「会いたい」と言えなかった。勇気を出してオファーを
出したら、二つ返事で引き受けてくださった。ほんとうに感謝しかない。
雅子先生のお話しは、まさに、「死を考えることは生きること」だった。
関本先生と同じ職業を選んだ緩和ケア医の剛先生は、自らが末期がんとわかってから、
さらに成長をされたのだと話してくれた。息子の成長を喜ぶ母の顔を時折見せながら。
死を考えながら生きることで、剛先生は、最後まで「成長」し続けていた。
以前のこのメルマガにも書いたけれど剛先生ご自身ががん患者となったことで、
今までより一層、真剣にがん患者さんの気持ちを考え、向き合うことができたという。
そんな息子の最期の日々を、誇らしげに振り返って愛情たっぷりに語られる雅子さんは、
素晴らしい緩和ケア医であり、最強の母である。グレートマザーとは、関本雅子のことだ。
なんと強い人なのだろう……そう思いながら、いや、雅子さんはあえて、息子さんのことを
こうやって公の場で言葉にすることで、自分自身を鼓舞しているのだと気が付く。
「大切な家族の死をよく、大勢の前で語る気になるよね」と揶揄する人も中にはいるだろう。
しかし、人間の感情とは、そんな単純にはできてはない。
人は、語ることの中で癒されるのだ。
死にゆく人の言葉を受け止める「傾聴」の先に、
その悲しみを精一杯傾聴して受け止められた人が、言葉を発することも必要だ。
語ることでしか、癒されない孤独がある。
僕もそうかもしれない。そして歌うことでしか、救われない自分がいる。
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