メルマガ読むならアプリが便利
アプリで開く

週刊Life is beautiful 2023年10月31日号:スマートフォンの次を担うデバイス、InstaGraph

週刊 Life is beautiful
今週のざっくばらん InstaGraph 先週、私の長男(洋平)が作ったInstaGraphの紹介をしましたが、予想外の展開をしています。 最初に彼からデモを見せてもらっと時にはピンと来なかったのですが、TED AIへの参加の前準備としてInstaGraphを私のMacBookで動かしてみて、その価値に気がついたのです(私は、洋平がTEDでInstaGraphの話をするとばかり思っていました)。 InstaGraphは、ユーザーが入力した任意の文章からKnowledge Graphを生成するツールです。今時の言い方をすれば、「Text to Knowledge Graph」を行うツールです。 Knowledge Graphは枯れた技術で、すでにさまざまなところで使われていますが、Graphの生成に手間がかかるため、その利用範囲は限られたものでした。 しかし、LLM(大規模言語モデル)を活用することにより、Knowledge Graphの生成が桁違いに簡単になることが判明した今、これを活用したアプリやサービスには大きなポテンシャルがあると思うのです。 そこで、InstaGraphのgithub repository(ソースコードを管理し、公開している場所)にコラボレーター(共同開発者)として、シンギュラリティ・ソサエティの仲間と一緒に参加し、まずはソースコードを綺麗にした上で、どんなサービスにするかのディスカッションを開始しました。 まずはさまざまなKnowledgeGraphをウェブ上で、誰でも簡単に作れてシェアできる無料サービスとしてローンチした上で、ユーザーからのフィードバックをもらいながら良いものに育て、どこかの時点で、有料版をリリースし、ベンチャー企業として立ち上げることを本気で考えています。 幸いなことに、InstaGraphの周りにはすでに開発者やKnowledge Graphファンのコミュニティが出来ており、彼が立ち上げたウェブサイトInstaGraph AIでは、既に1700人以上の人がwaitlistに参加(ベータ版へのアクセスの申し込みをすること)をしています。 今年中にはベータ版を立ち上げる予定なので、興味のある方は是非ともwaitlistに参加してください。 連載小説:「H・O・P・E」 突然ですが、ここで小説の連載を始めることにしました。サンフランシスコで開かれたTED AIに参加した後、ハワイ行きの飛行機の中でストーリーを思いつき、居ても立ってもいられずに文章を書き始めました。 飛行機の中で書いた時は、星新一のショートショートぐらいの長さにまとめて、noteで公開しようと考えていたのですが、ハワイの家についてから、noteに出版する準備をしている際に、次第にこれは「私にしか書けない小説」であることが判明し、もっと本腰を入れて書くべきだ、と言うことが明確になりました。 読んでいただければ分かりますが、この小説には、AIによる失業、UBI(ユニバーサル・ベーシック・インカム)、メタバース(もしくはオンラインゲーム)、イジメ、テロ対策など、私がこれまで色々と温めて来た、さまざまな社会問題に関する考えが満載されています。未来を描いたSF小説が、世の中の方向性に少なからず影響を与えてしまうことがしばしばありますが、「SF小説」と言う形を借りて、「来るべきAI社会はどうあるべきか」と言う提言を本気でするのも悪くないと考えたのです。 第一章 届いた荷物を開けると、そこには「ようこそUBIプログラムへ!」と一言だけ書かれたカードと共に、一つの「グラス」が丁寧に梱包されていた。詳しい説明は、グラスをかければ分かる、ということなのだろう。 友也は梱包を開けて、グラスを手に取った。子供の頃に遊んでいたグラス(その頃はVRグラスと呼ばれていた)と違い、とても軽くて薄い。明かに最新式だ。 大学受験に失敗し、就職もせずに、UBIと呼ばれる社会保障システムの恩恵に預かることになった友也に、なんでこんな高価なグラスを受け取る権利があるのか腑に落ちなかったが、友也は迷わずにグラスと、同梱されていた手袋を装着した。 ◇ ◇ ◇ 友也は、ごく普通の高校生だった。勉強は中の上ぐらい、サッカー部には入ったものの、運動神経の鈍い友也は万年補欠だった。たとえレギュラーになったところで、友也が通っていた学校の弱小サッカー・チームのレギュラーになっただけでは女の子にモテるわけはない、と友也は割り切っていた。 そんな友也が大学に進めないのは、友也が中学3年の時に政府により行われた、大学の「大編成」のためだ。友也が小学校に入学した頃に始まったAIの急激な進歩により、世の中が「AIを使いこなして桁違いの生産性で働くエリートたち」と「そうでない人々」とに、はっきりと二分されてしまったのだ。 結果として、大学を卒業しながらも就職できない人たちが大量に増え、「通ってもまともな職につけない大学」とレッテルを貼られた大学が次々に経営危機に陥ってしまったのだ。 大学の閉鎖や合併が続く中、ついに政府が重い腰を上げ、一部の大学だけをエリート育成のための職業訓練学校として残し、他は廃校することを促した結果、大学の数が大幅に減り、大学に行けるのは偏差値65以上のごく一部の学生だけになってしまったのだ。 その煽りをまともに受けたのが、友也の1〜2年上の先輩たちだ。政府はさまざまな施策で彼らの社会参加を促そうとしたが、高卒の彼らに出来る仕事と言えば、自動化に乗り遅れている小売店の売り子や、工事現場、高齢者の介護の補助など、いわゆる海外からの技術研修生たちがやっているような仕事だ。 AIの進化により、働く人を求めている職場と、人々が働きたいと考える職場の間に大きなギャップが生まれ、求人倍率が1を超えているにも関わらず、若年失業者が増える、という大きな歪みが社会に生まれてしまったのだ。 工事や介護などの職場に人が不足している問題は、AIの進化を追いかけるように急速に進んでいるロボット技術により数年以内に解決するだろうと言われているが、失業者の、特に若年失業者の問題を解決する方法は簡単には見つからない。

この続きを見るには

この記事は約 NaN 分で読めます( NaN 文字 / 画像 NaN 枚)
これはバックナンバーです
  • シェアする
まぐまぐリーダーアプリ ダウンロードはこちら
  • 週刊 Life is beautiful
  • 「エンジニアのための経営学講座」を中心としたゼミ形式のメルマガ。世界に通用するエンジニアになるためには、今、何を勉強すべきか、どんな時間の過ごし方をすべきか。毎週火曜日発行。連載:菅首相に会って来た/米国で起業する時に知っておかねばならないこと。
  • 880円 / 月(税込)
  • 毎週 火曜日(年末年始を除く)