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【Vol.506】冷泉彰彦のプリンストン通信『中国と中東の見方を変えてみる』

冷泉彰彦のプリンストン通信
「政府の労働政策がズレまくっている件」  岸田政権は、増税かと思えば減税ということでかなり迷走しています。話 の流れはこうです。「異次元の子育て対策をすると言っていた」のが最初で、 その結果「財務省が財源がないというので増税を呑んだ」わけですが、そう すると「肝心の子育て世代は給付と増税が相殺されてかえって損になる」と 批判され、ではということで「この際、臨時に税収増もあったので減税だ」 となったわけです。改めて振り返ってみると、かなりヒドい迷走です。  迷走ということでは、厚生労働分野の重点事項案というのも、かなりひど い内容です。具体的には、非正規労働者が働きながらリスキリング(学び直 し)を進める新たな職業訓練事業の導入という問題と、デジタル分野の職業 訓練を受ける中高年層向けに、最長6カ月のインターンシップという案です。 こうした政策も、迷走と言わざるを得ません。  まず、非正規労働者が「働きながらリスキリング(学び直し)を進める」 というのが、よく分かりません。2つ意味不明な点があるからです。  1つは、本来のリスキリングというのは、産業内あるいは企業内における 技術革新を受けて、現場の人材に実務研修を施し、システムも人も業務内容 を改革してゆく際の「学び直し」のことです。例えばですが、航空会社の地 上職員向けに予約管理システムのUIを大きく変えたとか、あるいは新世代 の利用者が単独で操作できる自動チェックイン機を導入したので、それを支 援する地上職員の動きも操作も全く変わるというような場合に、地上職員に は研修が必要です。  また、金融機関がフィンテックを推し進めて窓口業務の内容が変化した場 合には、相当にまとまった研修が必要になります。また、そのフィンテック のユーザーである企業の経理担当者も、オンラインでの出納業務を新しいU Iで実行するには、相当の研修が必要です。また、企業内部の決済や帳簿付 けのシステムも変わるわけで、とにかく学び直しが必要になります。  そういった本来のリスキリングというのは、企業が存続するには必要なこ とです。また全く何も知らない、つまり航空会社の地上職員に必要な知識が ゼロだったり、銀行業務や企業の経理の仕事を全く知らない人ではダメなの で、過去の経験をベースに研修して、新しい働き方を指せるわけです。これ は必要な業務であり、そうした研修で人材のスキルをアップデートできなけ れば、企業は潰れます。  反対に企業が横並びで改革を拒んで、政治家を巻き込んで「ハンコと紙を 維持しよう」などということをやれば、国際競争力を失って国は潰れます。 ですから、人間が飯を食べなくては死んでしまうように、企業はリスキリン グをしなければ死にます。それをどうして税金を使って補助するのか、意味 が全く分かりません。(続く)

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  • アメリカ北東部のプリンストンからの「定点観測」です。テーマは2つ、 「アメリカでの文脈」をお伝えする。 「日本を少し離れて」見つめる。 この2つを内に秘めながら、政治経済からエンタメ、スポーツ、コミュニケーション論まで多角的な情報をお届けします。 定点観測を名乗る以上、できるだけブレのないディスカッションを続けていきたいと考えます。そのためにも、私に質問のある方はメルマガに記載のアドレスにご返信ください。メルマガ内公開でお答えしてゆきます。但し、必ずしも全ての質問に答えられるわけではありませんのでご了承ください。
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