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日本経済凋落の真因を探る(第18回): 自動車産業の危機(その1) 辻野晃一郎のアタマの中【Vol.29】

『グーグル日本法人元社長 辻野晃一郎のアタマの中』~時代の本質を知る力を身につけよう~
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 『グーグル日本法人元社長 辻野晃一郎のアタマの中』  ~時代の本質を知る力を身につけよう~【Vol.29】 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【今週号の目次】 1. 気になったニュースから  ◆ 大切なのは忘れ去ることなく真実を追求し続けること 2. 今週のメインコラム  ◆ 日本経済凋落の真因を探る(第18回): 自動車産業の危機(その1) 3. 読者の質問に答えます! 4. スタッフ“イギー”のつぶやき ───────────── 2. 今週のメインコラム ───────────── ◆ 日本経済凋落の真因を探る(第18回): 自動車産業の危機(その1) 本シリーズをスタートしてから、個別の産業セクター編としては、これまで家電産業、半導体産業をみてきました。今号からは、自動車産業について考えてみたいと思います。 私はかねてから、家電産業で起きたことは必ず自動車産業でも起きると発言してきましたが、つい先日、三菱自動車が中国市場から撤退する、というニュースを見て、いよいよ終わりの始まりが可視化されてきたように感じました。今後、日本の自動車産業はどうなっていくのでしょうか。 折しも、東京ビッグサイトで、東京モーターショーが姿を変えた「ジャパンモビリティショー2023」が10月28日から11月5日まで開催されています。今週会場に行く時間が作れれば、次号あたりでその様子も盛り込みたいと思います。 ◇ テスラの脅威 先日、テレビの報道番組を見ていたら、自動車評論家なる人が、トヨタの全個体電池が完成したら、EVでの出遅れを挽回する起死回生のホームランになる可能性がある、と発言しているのを聞いて唖然としました。 この発言を聞いて、私はずいぶん昔に、アップルのiPod/iTunesが出てきたときに、ソニーで長年ウォークマンを担当していた人たちが、「音質を良くすれば勝てる」、「バッテリーを長持ちさせれば勝てる」、果ては、「ウォータープルーフモデルを出せば勝てる」、と本気で言っていたのを聞いて唖然としたことを思い出しました。まるでデジャブのようです。 トヨタは、出光興産と全個体電池の量産化に向けて提携することを発表しており、2027年には量産ラインを稼働させるとアナウンスしています。既にトヨタをはじめとした日本の自動車メーカー各社は、世界のEVシフトの流れに完全に取り残されています。今さらリチウムイオン電池で巻き返すことは難しく、よりエネルギー密度が高く短時間充電も可能な次世代電池に力を入れるのは当然でしょう。しかし今、自動車産業で起きているパラダイムシフトの本質はそんなことではないのです。まるで、前述したアップル対抗で、ソニーがバッテリーで対抗することを持ち出した話を彷彿とさせます。もちろん、EVにとって電池は最重要な基幹部品です。しかし、次世代電池を巡っては既に世界で激しい開発競争が始まっています。仮にそこで勝てたとしても、それだけではEVを制することにはなりません。 アップルは、インターネットの時代に合わせて、パーソナルオーディオという市場の生態系を丸ごと作り変えてしまいました。その結果、ソニーはウォークマンで築いた牙城をあっさりと奪われてしまったのです。デバイスの性能を良くすれば勝てるなどと言う話ではありませんでした。iPodが進化したiPhoneでは、クラウド側に主な基盤や付加価値があり、手元のデバイスはアップルの生態系を構成する一部に過ぎないように、今、テスラが進めていることの本質は、自動車産業の生態系を丸ごと再構築しつつあるということです。 すなわち、彼等は、単に電気自動車を作っているわけではなく、GAFAMと同様にインフラとなる盤石なクラウド基盤を構築し、給油網に代わる電力供給網を張り巡らしています。さらには、--

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