久しぶりに私の留学先メニンガー精神医学校時代の同級生と会った。
アメリカのメディカルスクールを出てアメリカで精神科医をやっているバリバリの医師で、アメリカの正式な精神分析医の資格ももっている。
3年に一度くらい日本に帰ってくるのだが、その際には会うようにして、最新の精神分析の事情やアメリカの精神医療の事情を聴いている。
彼の勤め先は、VA=退役軍人病院(Veterans Affairs Hospital)と呼ばれるところで、無保険者が多く、貧しい人たちの悲惨な医療(というか、医療が受けられない)が問題になるアメリカにおいて、退役軍人が手厚い医療を受けられる病院として知られる。
私も留学中に見に行ったことがあるが、広大な敷地にあるすばらしい病院だった。
これが全国に数百もあるというのだから、戦争の好きな国だけあって、軍人は退役後も優遇されていると感心したものだ。
そして、VAの重要な機能が、精神科医療である。
とくにベトナム戦争以降、退役後のPTSDが問題になった。
戦場で死にかける経験をしたり、多くの仲間が殺されるのを目撃して、多数の退役軍人がPTSDになった。この病気はなかなか治らないことでも知られていて、今でもベトナム戦争の退役軍人がPTSDで入院していたり、通院を続けていたりするという。
そのため、VAでは、どのような治療が退役軍人に効くのかのリサーチが今でも続けられているそうだ。
その中で、今、注目されているのがサイケデリック・ドラッグを使って、夢幻状態、幻覚状態にしたうえで、サイコセラピーを行うと、トラウマに対する感覚が劇的に改善して、PTSDの症状がものすごくよくなるということである。
その先生の患者さんも、これまで何十年も症状に苦しめられていたのが嘘のように楽になったと言っていたそうだ。
MDMAやケタミンやマシュルームなどが使われるそうだが、ケタミンを除くと日本では非合法だ。
そうでなくても、日本はレイプなどをされてPTSDになっても、まともな精神療法ができる人がいないのだから、この手の医療用麻薬をきちんと合法化して、少しでも患者が救えるようにすべきなのだが、そういう話はまったく進まない。
そして、ちょっとでもそれを使った人間がいたら、大学全体を潰しかねないくらいボロクソに叩く。
いっぽうで、警察はレイプ被害者の被害届を受理しなかったり、受理しても3割しか起訴しないで、100万円の示談金でその加害者を野に放つからレイプ被害が減らない。
大学の医学部は82もあるのに、カウンセリングが専門の主任教授がいないから、全然治療者の養成が進まない。
そして、この手の先進的医療については警察官僚が邪魔をするので導入できない。
誰か偉い人の子どもがレイプされない限り、日本のレイプ被害者の悲惨な現状は変わらないだろうと痛感した。
ただ、誤解がないように言っておきたいが、海外で合法でも日本で非合法である以上、不本意でも法律は守るべきだというのが法治国家のルールだと私は考えている。法律がおかしいと思えば、立法府の議員を変えるのが筋だ。そしてその選挙権は国民がもっている。
だから、日大の学生がその法律を守らなかったことは許されないことだと思うし、それに対しての対応が悪かったことはもちろん認めるし、私も執行部の一員として責任を感じている。
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