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知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード
vol. 202
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みなさん、こんにちは!ITジャーナリストの牧野武文です。
今回は、中国のGDP統計に対する信頼度についてご紹介します。
このメルマガの読者のみなさんは、中国の統計情報を見るとき、「中国の統計は信用ができない」という話が、いつも頭に引っかかってしまうのではないかと思います。この「信用ができない」の内容は2つに分けることができます。
ひとつは、中央政府が統計をよく見せるために操作をしているのではないかというもので、もうひとつは、中国の統計集計法の精度が悪いということです。
前者の改竄などについては、誰にも正確なことはわかりません。しかし、中国の経済統計も海外の信頼ができる経済統計と連動をしているわけで、そのような観点で、改竄をしているという決定的な証拠は見つかっていません。
精度が悪いという問題については、研究者などが指摘をしており、特に日本の精密な統計と比べると精度が悪いのは事実だと思います。
しかし、中国は社会主義国であり、統計そのものの扱いが私たち資本主義国とは異なっています。それどころか、算出方法や発表手法も異なっており、この違いを見逃して、日本の統計と同じだと思って見てしまうと、数字が読めなくなってしまうことが起こります。
そこで、今回はGDP統計に絞って、日本と中国にどのような違いがあるかをご紹介します。中国の統計を読む時は、この違いを頭に入れて読む必要があるからです。
知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード vol. 202
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▼目次▼
中国のGDP統計は信頼できるのか。日本とは異なる中国GDP統計の仕組み
小米物語その121
今週の「中華IT最新事情」
次号以降の予定
Q&Aコーナー
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中国のGDP統計は信頼できるのか。
日本とは異なる中国GDP統計の仕組み
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今回は、中国のGDP統計の信頼性についてご紹介します。
このメルマガの読者の方々は、中国ビジネスに関われているか、個人的に興味を持たれているなど、なんらかの形で中国に関わりがある方が中心だと思います。そういうみなさんですから「中国のGDP統計は水増しがひどくて信用ができない」という話は、いつも頭のどこかに引っかかっていると思います。
その水増しが、根拠のない中傷であるなら無視をすればいいのですが、きちんとした経済学者などの専門家が、エビデンスを元に指摘をしている例もたくさんあります。しかし、よく考えれば当然のことですが、そのような研究に対して検証をした上で反論をする研究者もいます。アカデミックな世界では、何ごとにも両論あるのがあたりまえのことです。しかし、メディアは、ニュース価値のある片方の見解を大きく報道し、それに対する反論はニュース価値がないので、あまり報道をしません。
例えば、シカゴ大学の経済学者、ルイス・マルティネス氏による研究などは、最近のメディアのお気に入りになっています。マルティネス氏は、米国海洋大気庁が運用している気象衛星の夜間写真から、各国の夜間照明の明るさを数値化して、それを公開されているGDPと比較をするという研究を行いました。その結果、非民主的国家では夜間照明の明るさとGDPに大きな乖離があるということわかったというものです。つまり、中国のような非民主的な国家はGDPが経済実態を表していない=改竄が行われているのではないかという疑いがあるわけです。しかも、この研究の結果では、日本のGDPは過小評価されている、つまりもっとGDPが高くてもおかしくないはずという結果になっていますので、「中国のGDPは水増し、日本のGDPはもっと高くておかしくない」ということになり、一部の方にとっては自尊心をくすぐられるため、記事としての価値が生まれ、さまざまなメディアで報道をされています。
https://www.epochtimes.jp/2022/11/123245.html
▲「中国、GDP3割水増しか。米シカゴ大学の最新研究が指摘」(大紀元)など、マルティネス氏の研究はさまざまなメディアで報道されている。
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