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§ ぶんぶくちゃいな § vol.480 § ポッドキャスト「不明白播客」:彼らはなぜ李克強を悼むのか §

§ 中 国 万 華 鏡 § 之 ぶんぶくちゃいな
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ § 中 国 万 華 鏡 § 之 ぶんぶくちゃいな § vol.480 § 2023年11月11日発行 § 今週のトピック: ポッドキャスト「不明白播客」:彼らはなぜ李克強を悼むのか ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 10月27日早朝、李克強・前国務院総理の訃報が流れた。最初それを聞いたとき、誰もが耳を疑ったことだろう。何しろ、今年3月に10年の総理の職務を終え、引退したばかりだったからだ。また、亡くなるつい1カ月ほど前に敦煌に姿を表し、それも一部で話題になっていたからだ。 もう一つ、人々を驚かせたのは、その情報の公開の速さだ。報道されている情報によると、李は26日に心臓発作を起こして病院に担ぎ込まれ、27日未明に亡くなったという。 中国では国家指導者の死は一般にすぐには発表されず、周囲や医療関係者、あるいは中南海(中国指導者らが暮らす地域)の動きから漏れ伝わり、夜7時の全国ニュース放送で発表されるというのがお決まりだからだ。だから、それまでにちょっとでも高官死亡の情報、あるいは噂の片鱗を掴んだ海外メディアがすっぱ抜きを狙ってさまざまな取材を繰り返すのが常となっている。 だが、李克強の死は夜が明けた、現地時間の朝8時頃には新華社によって明らかにされた。もちろん、多くのメディアは想像もしておらず、寝耳に水だったに違いない。というのも、まだ68歳。周期的に高額な健康診断を受けているはずの身にいったいなにが起こったのか? そのニュースを受けて、日本でもあっちこっちのウェブサイトにその影響を予測するコラムが出現した。市民が李の安徽省の旧居に集まっているというニュースをもとに、「天安門事件の再来」をちらつかせるもの、そして経済政策担当だった李の死によって中国の経済政策が不安定になるといった、いわゆる「目玉を引き寄せる」論調の記事がたくさん出現した。 筆者も編集者の依頼で1本書いた(https://bit.ly/3QVE9u8 )が、すでに李が引退して半年あまりが過ぎ、「天安門事件」も「経済不安定」も起こらないと、「ドラマ」を期待する筋には肩透かしな内容となっている。 だが、筆者もSNSのタイムラインには李を追悼する言葉や写真がズラリ並んでいるのを目にしたし、多くの人たちが李の旧居に追悼に駆けつけたというニュースを知っている。そんな庶民の思いを無視するつもりはない。だが、それを一足飛びに「天安門事件」などと、読む側にとってわかりやすい言葉で煽り立てるのはいかがなものか(書き手さんにとっては、「わかりやすさ」でアクセスしてもらえれば収入につながり、「それでよし」なんだろうが)。 きちんとSNSに流れる声を読めば、そんな単純なものではなく、実際には人々は複雑な思いを抱えて、李克強を悼んでいることがよく分かる。そんな声を、「ニューヨーク・タイムズ」の中国人記者、袁莉さんが自身のポッドキャスト「不明白播客」で取り上げ、紹介していた。この、中国庶民の生の声を知ることができる非常に貴重なエピソードの翻訳公開を、また袁さんにご相談し、快諾を得たのでここに公開する。 袁さんについては、すでにこれまで何度かご紹介してきたのでここではもう再掲しない。今回はこれまでご紹介した同ポッドキャストの内容とはちょっと違い、中国国内在住の一般リスナーを袁さんがインタビューする形で紹介している。 今回の袁さんのゲストは3人だが、この「ぶんぶくちゃいな」ではその一人、トムさんのインタビューをご紹介する。残りの2人のインタビューは後日、わたしのノート(https://note.com/wanzee )で無料公開する予定なので、ご興味のある方はぜひご覧いただきたい。 なお、文中の[]は筆者が、日本人読者が読みやすいように補足したり、注釈をつけた部分である。 ******************************* ◎ポッドキャスト「不明白播客」:彼らはなぜ李克強を悼むのか? 10月27日に李克強前総理が死去した際、中国共産党は李克強氏を「長きにわたる忠実な共産主義戦士であり、傑出したプロレタリア革命家、政治家であり、また党と国家の傑出した指導者」と称する追悼文を発表したものの、党と政府系メディアの論調はかなり控えめで、冷淡とさえ言えるものでした。ソーシャルメディアでは、「人民の良き総理」「偉大な人物」と彼を評価するコメントが削除されると、彼がかつて語った「長江や黄河は逆流しない」[*1]「人がやっていることを天は見ている。お天道様は騙せない」などの言葉が引用されるようになり、それはまるで抗議のスローガンのようでもありました。 《[*1]「長江や黄河は逆流しない」:李克強がまだ国務院総理の職にあった2022年8月に、深セン市を視察した際に語った言葉で、トウ小平が進めた改革開放路線を継続していく意志を強調した。しかし、実際には習近平主導による保守的政権運営が続けられており、この言葉は李をはじめとする党内関係者の間に意見の相違があることを明らかにしたと話題になった。》 今回は、自らの意志で李克強の追悼に出かけた3人のインタビューをお届けします。彼らはわざわざ李克強の故郷である安徽省合肥市の旧居に出かけて花を手向けたり、学校のキャンパスでスローガンを貼ったりしました。 彼らはなぜ、それほど大きな政治的功績を残さなかった総理を追悼したのでしょう? そして、なぜあえて政府が喜ばないだろうことをしたのか? 彼らは怖いとは感じなかったのでしょうか?

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