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ジャーナリスト伊東 森の新しい社会をデザインするニュースレター(有料版)2023年11月12日(日)号

ジャーナリスト伊東 森の新しい社会をデザインするニュースレター(有料版)
--------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- インド、国名を「バーラト」へ変更? 「バーラト」とは モディ政権のヒンドゥー至上主義の裏で --------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------  有数の新興国であるインドが、今、世界で急速に存在感を高めている。  首都ニューデリーで開かれた9月9、10日のG20サミット(主要7カ国・首脳会議)は、同国のモディ首相にとってみれば、その存在感を世界に示すことのできる重要な機会になったであろう。  同サミットをめぐっては、ロシアのウクライナ侵攻後、各国の対立や意見の隔たりが大きく、当初は首脳宣言さえ出せない事態も予想されていた。  しかしインドは、議論が始まってもいないような段階で、各国に首脳宣言を提案し、判断を迫る”奇策”を演じ、初日に採択がなされるという異例の展開を生む(1)。  国連経済社会局の推計で、今年4月までに人口が14億2477万に達し、中国を追い抜き世界トップの座に躍り出たとみられるインド。若年人口も多く、今後もますます経済の発展も見込める。  一方で、インドが抱える課題も山積みだ。特に製造業の弱さが目立つ。製造業振興策である「メーク・イン・インディア」の下、目下補助金を活用した産業育成策を進めるも、なお主要な製品は輸入に頼っているのが現実。  世界一という人口ながら、その「人口ボーナス」を生かせていない社会構造の問題点も指摘される。みずほリサーチ&テクノロジーズに対木さおり主席エコノミストは、週刊エコノミストの取材に対し、 「人的資本の蓄積の遅れは深刻で、特に女性の労働参加率の低さが経済成長を妨げている」(2) と指摘。とくに農村部では、女性は家庭の労働力として扱われ、学校に通っていない少女も少なくない。女性の識字率も6割台(2021年)にとどまり、これはアジア諸国の中でも飛びぬけて低い段階にある。  そのようなインドであるが、最近、「インド」という国名を変更する動きがあるという。 目次 ・インド、「バーラド」へ国名変更? ・インド国内でも賛否 ・ヒンドゥー至上主義 ・インド、「バーラド」へ国名変更?  「インドの国名がバーラド」に変わる・・・。そう世界的にささやかれるようになったのは、G20サミットの招待状や議長席のプレートのインドの国名を、今回、「バーラド(Bharat)」と表示したためだ。そのことが、インドが国名を変更する布石ではないかと憶測が広がっている。  バーラトは、インドの公用語であるヒンディー語や、インドそのほかの主要言語で広く使われる、「インド」を意味する言葉。とくに、インド憲法の第一条では、「インドすなわちバーラトは、諸州の連邦である」と明記されている。  つまりは、憲法上もインドは、現在でもバーラトを国名として問題なく使えるという(3)。ただし、インドはこれまで外交の場では英語表記の「India」というものを使っていた。  そんな矢先、G20サミットで公式晩餐会を開催したインドのムルム大統領が、招待状で自らを「インド大統領」ではなく、「バーラト大統領」と称したことから、国際的なニュースとなった(4)。  もしインドか国名を変更するとならば、その最大の理由は来年に控える総選挙のためであるという。現段階において、国名変更の影響はどこまでが定かではなく、モディ政権は今、G20サミットの場で”バルーン”を打ち上げて、国内外の反応を見ているようだ。  インドには「インド」のほか「バーラト」や「ヒンドゥスタン」という呼称があった。英紙「ガーディアン」(5)によれば、インドという名称は、サンスクリット語に由来すると考えられており、国の北部を流れる「インダス川」を指す。  そして「インド」は2000年以上前、ペルシア人や古代ギリシャ人、ローマ人によって使われていた名前。18世紀にはイギリスの統治下にあるアジア大陸の領土を指すために、初めて地図に採用された。 ・インド国内でも賛否  このうちヒンドゥスタンは、かつて「ペルシア人やギリシャ人、デリーのスルタン、ムガル人が何百年もの間、亜大陸の北部と中央部の地域を指すために使用していた名前」とされている(6)。  今回話題になっている「バーラト」は、紀元前1500年頃に書かれた古代サンスクリット語の聖典『リグ・ヴェーダ』に由来。この文書には、「現在の北インドとして知られる地域を占める主要な部族のひとつとして、バーラタ族が言及されている」と記されている。

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  • 日々流れるニュースを、様々な視点から分かりやすく解説するニュースサイト「ジャーナリスト 伊東 森の新しい社会をデザインする The Middle News Journal」のニュースレター有料版です。 いまだ私たちに伝えられてこないマスコミの情報は、残念ながら存在します。 「そもそも?」「Why?」を大事に、マスコミの情報を再編集し、様々な視点や確度から執筆していきます。 その「水先案内人」として、私の仕事が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
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