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佐々木俊尚の未来地図レポート 2023.11.13 Vol.781
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【今週のコンテンツ】
特集
書籍「天才たちの日課」から学ぶ本当のワークスタイル
〜〜〜アイデアや発想は書き留めるだけでは先に進まない(1)
未来地図キュレーション
佐々木俊尚からひとこと
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■特集
書籍「天才たちの日課」から学ぶ本当のワークスタイル
〜〜〜アイデアや発想は書き留めるだけでは先に進まない(1)
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メイソン・カリーという編集者/ライターが個人的なブログ「Daily Routine(日々のルーティン)」をもとにして書いた「天才たちの日課」という書籍があります。
★「天才たちの日課」Kindle版
https://amzn.to/3FWgW4M
古今東西のさまざまな文学者、アーティスト、思想家、音楽家といった人たち(なんと総勢161人!)がクリエイティブな活動をするために毎日の時間をどのように使ってきたのかを調べた本です。破天荒に荒ぶる生活を送っていた人もいますが、けっこう多くの人たちが実に規則正しい生活を送っていることにも驚かされます。
たとえば「魔の山」で有名な作家トーマス・マンは、毎朝8時前に起床して9時になると書斎に入ってドアを閉める。その後は来客があろうが電話が鳴ろうが家族が呼びに来ようがいっさい応じない。子どもたちにも午前9時から正午までは絶対に物音を立てないように厳しくしつけていたそうです。そして正午になったら、必ず仕事を終える。「いまが佳境だからもう少し書きたい」と思っても、絶対に正午には終わり、以降は翌日に必ず回すということを守ったそうです。
そして午後は昼食、葉巻、ソファで新聞雑誌書籍を楽しみ、夕方には一時間昼寝をしてからお茶と軽食をとり、手紙や短い依頼原稿などを書いてから、夕食をとって12時には就寝。
実に理想的な生活ではないでしょうか。
文豪アーネスト・ヘミングウェイも紹介されています。晩年は精神的な病に苦しめられ61歳のときに散弾銃で自殺してしまうのですが、全盛期には実に健康的な日々だったようです。毎朝5時半から6時ごろ、夜明けとともに起きる。遅くまで酒を飲んでいてもこの起床時間は必ず守り、しかも二日酔いとも無縁で、息子の回想では「父はいつでも元気そうに見えた。まるで防音室で黒いアイマスクをつけて赤ん坊のようにすやすや眠ったあとみたいだった」。
そして仕事は朝6時から正午まで。「天才たちの日課」によると、ヘミングウェイ本人はこう書いているそうです。「書くのをやめるときは、からっぽになったような感じがする。だが同時に、からっぽじゃなくて満たされた感じもする。好きな相手とセックスしたあとみたいにね。心から安心できて、悪いことなどなにも起こらないという感じだ」
「からっぽじゃなくて満たされた感じ」というのは、なんて素晴らしい表現でしょう。わたしもこのようにして文筆生活を送りたいとしみじみ思います。ちなみに同書にはヘミングウェイの執筆スタイルが一風変わっていたことも紹介されています。いちばん驚くのはこれ。
「彼独特の執筆中の癖はたしかにあった。ヘミングウェイは立って書いた。胸の高さまである本棚の上にタイプライターを置き、その上に木製の書見台を置いて、それに向かうのだ。最初の草稿は薄い半透明のタイプライター用紙を書見台にのせて、鉛筆で書く。それがうまく書けると書見台をタイプライターに替えて打っていく。ヘミングウェイは毎日、書いた語数を表に記録していた。それは『自分をごまかさないためだ』という」
「天才たちの日課」には、「女性編」という続編もあります。
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