1)性別変更の最高裁決定と、政策への影響
最近、大きな政策変更につながりそうなニュースとして、性別変更の際の「手術要件」を違憲とする最高裁判所の判決がありました。
(以下引用)
出生時の性別と性自認が異なるトランスジェンダーの人が戸籍上の性別を変更する際、生殖機能をなくす手術が必要になる「性同一性障害特例法」の規定(生殖不能要件)が違憲かが争われた家事審判の特別抗告審の決定で、最高裁大法廷(裁判長・戸倉三郎長官)は25日、この規定が「強度な身体的侵襲の手術か、性別変更を断念するかの過酷な二者択一を迫るもの」として、初めて違憲と判断した。裁判官15人全員一致の意見。手術を望まない当事者に性別変更の道が開かれ、国は要件の見直しを迫られる。
性別変更の「手術要件」は違憲 最高裁が初判断 生殖能力なくす性同一性障害特例法の規定 東京新聞TOKYO Web 2023年10月25日
https://www.tokyo-np.co.jp/article/285891
外見的な性別と心理的な性別が一致していないと感じる性同一性障害の方は、「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」に基づいて、一定の条件をそろえれば性別変更の請求を裁判所にできるようになっています。
「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」では、その要件を以下の5つとしています。
① 18歳以上であること
② 現在結婚していないこと
③ 現在未成年のこどもがいないこと
④ 生殖機能がないこと
⑤ その体に、別の性別の性器に似たものを有していること
このうち、④の生殖機能がない状態を作るには、精巣や卵巣を切除する手術が必要であると考えられています。
高裁では、変更する前の性別の生殖機能にもとづいてこどもが生まれれば、社会が混乱するとして、④の要件について、憲法違反でないと判断していました。
これに対して、最高裁は、この④の要件について、高裁と異なる判断をします。
最高裁は、
- 性別変更後に元々の性別により子どもを設けることにより問題が生じることは極めてまれである
- 法律上は、未成年でなく成年の子供がいる場合は、性別変更ができるが、大きな混乱が社会に生じているわけではない
一方で、性同一性障害に対する治療として、どのような治療が適切かは、患者ごとに異なるため、医学的にも精巣などの除去手術を要件とすることは医学的にも合理的でなくなっているとして、憲法違反であると判断しました。
※ 参考
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/446/092446_hanrei.pdf
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