vol.203：コロナ禍、物価高騰、消費不況が連続して襲う飲食業。火鍋チェーン「海底撈」はどうやってV字回復に成功できたのか

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 知らなかった！中国ITを深く理解するためのキーワード vol. 203 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ みなさん、こんにちは！ITジャーナリストの牧野武文です。 今回は、中国で有名な火鍋チェーン「海底撈」のV字回復ついてご紹介します。 中国だけでなく、日本でもその他の国でも、飲食業はさんざんな目に遭ってきました。2020年からのコロナ禍による休業、来店客減少。2021年になってからは原材料費の高騰。そして、今、先行き不安からくる消費マインドの萎縮が起きています。 飲食業にとって、ひとつだけでもかなり厳しい事態なのに、それが毎年連続して襲ってきています。しかも、どれもが外部要因で、飲食店経営者にしてみれば、対応策にも限界があることばかりでしょう。 海底撈は、火鍋チェーンなので、大人数で行って、楽しく騒いで火鍋を食べるという店で、コロナ禍前は大人気となり、どこに店も1時間2時間の行列ができていました。それでもみんな行列に並ぶのです。美味しいというよりは、楽しいからです。 それが、コロナ禍の対応に誤りもあって、2021年には巨額の損失を出し、海底撈はもはや復活できないのではないかとまで言われました。しかし、2022年になってみると見事にV字回復をしたのです。 その理由は、小さなアイディアを手数多く実行していったということに尽きます。そして、手数多くアイディアが出てくるのは、顧客満足度を上げると店長だけでなく、末端のスタッフまで給与が上がっていくという独特の評価体系があったからです。 今回は、海底撈とはどんな評価体系を持っているのかをご紹介し、V字回復するまでのストーリーをご紹介します。 知らなかった！中国ITを深く理解するためのキーワード vol. 203 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ▼目次▼ コロナ禍、物価高騰、消費不況が連続して襲う飲食業。火鍋チェーン「海底撈」はどうやってV字回復に成功できたのか 小米物語その122 今週の「中華IT最新事情」 次号以降の予定 Q&Aコーナー ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ コロナ禍、物価高騰、消費不況が連続して襲う飲食業 火鍋チェーン「海底撈」はどうやってV字回復に成功できたのか ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 今回は、コロナ禍からV字回復をした海底撈についてご紹介します。 飲食業が厳しい状況になっています。中国在住の誰に聞いても「中級店から高級店まで、飲食店に人がいない」という話が出てきます。客が入っているのは、中華ファストフードばかりだというのです。また、ある人は「高級店の中で、しっかりと味でお客をつかんでいる店はなんとかなっている」と言いますが、別の人は「いや、そういう店ですら厳しくなっている」と言います。 この4年、飲食店は散々な目にあってきました。2020年のコロナ禍では休業を余儀なくされ、2021年に回復傾向が見られたと思うと原材料費の高騰、そして2022年は感染再拡大、2023年に回復してくれるかと思えば、今度は消費マインドの萎縮による客離れが起きています。どれかひとつであれば乗り切れるかもしれませんが、毎年連続してやってこられるとさすがに持ちません。実際に飲食店の倒産数も増えています。 今ネットを飛び交っている言葉は「消費のダウングレード」です。2010年代後半には「消費のアップグレード」という言葉がよく使われました。多少高くても、品質のいいものを買うという意味です。つまり、消費のダウングレードとは、多少品質を落としても安いものを選ぶということになります。 また、「庶民が買えるものは値上がりをし、買えないものは値下がりをする」とも言われています。日本と同じように原材料費が全面的に上昇をし、多くの商品が値上がり傾向にあります。一方、テスラが値下げをし、住宅価格が下がるなど、高額のものは下がる傾向にあります。一言で言えば、高額商品が売れていないわけです。 このあたりの消費マインドの萎縮については、社会消費品小売総額などの統計を使って、後ほどご紹介します。 コロナ禍で打撃を受けたのは飲食と旅行です。しかし、旅行については、中国の場合は海外旅行はまだ低調ですが、国内旅行はじゅうぶんに回復をしました。旅行業にはようやく明るい兆しが見えてきます。