ドクター畑地の診察室218.2023.11.29.
現役呼吸器内科、総合内科専門医 畑地治です。
世の中に「○○飲んだらすべての病気が治った」「○○制限食をとったらすべての人が健康になる」等、出鱈目情報が溢れています。現代医療の特徴は精密医療で万人に効くような治療はありません。治療方法は個人によって全く違います!おそらく日本で一番多くの呼吸器疾患患者(肺癌、喘息、COPD、肺炎など)を診療する専門医が、最先端の精密医療を解説&ネットでは出し辛い医療や治療の裏側も配信!
https://zipangu-management.co.jp/culture_000/hataji/
三重県出身 自治医科大学卒業後、僻地診療、三重大学勤務を経て、呼吸器内科医師となる
松阪市民病院院長
診療の傍らFM三重で「肺、おさむに聴け!radioを聴いてらんらんらん(lung lung lung)」という毎週月曜日放送の番組を担当
https://fmmie.jp/program/getsumoku/hiosamu.php
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特発性間質性肺炎
さて、間質性肺炎と言う言葉を皆さんはご存知でしょうか。簡単に言うと、肺には空気が入る気腔領域と、肺胞の隔壁、気管支、血管などが通っている部分があります。通常の肺炎の場合、空気が入る気腔領域に、白血球や細菌などが滲出し、炎症を起こします。空気が入る気腔領域は実質と呼ばれていますので、通常の肺炎の場合、実質性肺炎となります。
それに対して、空気が入る気腔領域以外の部分を間質と言い、その部分が炎症やその他の刺激により、肥厚し厚くなってしまうのが間質性肺炎です。さてこの間質性肺炎、色々な原因で起こってくる訳ですが、原因不明のものを特発性間質性肺炎と呼ぶ訳です。(原因不明のと言う言葉の代わりに、医学用語では、カッコよく特発性とか、本態性とか言う言葉を使います。例えば、高血圧で1番多いのは本態性高血圧症です。)間質性肺炎の中で、特発性のものはほぼ7割を占め、後の3割が膠原病や過敏性肺臓炎など、原因が明らかなものです。特発性間質性肺炎のことを特発性肺線維症 Idiopathic pulmonary fibrosis(以下IPF)と呼ぶこともあります。
さて、このIPFですが、従来からいろいろな治療がなされてきました。例えば、ステロイド、免疫抑制剤の投与、などが行われてきたわけですが、予後を改善することができませんでした。60歳前までならば、肺移植の対象となるわけですが、多くの患者さんは、60歳以上であり、移植の対象患者さんは少ないです。5年生存率は3割程度であり、これは肺がんと膵臓癌を除いては、4期の進行癌よりも予後不良ということになります。例えば、胃癌や大腸癌の4期の状態よりも、IPFの方が予後が悪い訳です。
IPFの方の死因は3通りあり、最も多いのは急性増悪(ある日突然感冒などを契機に悪化する)です。それ以外に、徐々に呼吸機能が悪化し、呼吸不全でなくなる方、肺癌を発症してなくなる方があります。
従来は、予後を改善する可能性がある治療と言うのはなかったわけですが、数年前から、ニンテタニブという薬が上市され、急性増悪を減らす効果、呼吸機能悪化を減少させる効果が証明されました。しかも、この薬、早期に投与すれば投与するほど効果がある訳です。
IPFはいわゆる指定難病であり、申請した基準を満たした場合は医療費の補助があります。ある一定の重症度以上の基準を満たすと助成があるわけですが、この基準が来年4月から変わります。歩行時に酸素飽和度が基準値以下に低下する人は、安静時の血中酸素濃度が低下していなくても、医療費助成が出ることになります。
IPFの薬は高額であるというネックがあり、それが理由で経過観察せざるをえない場合もありました。今後は経過観察することでは不十分になります。CTのみで追跡することも多かったわけですが、積極的に歩行テストを行い、酸素飽和度が低下する人は積極的にニンテタニブにより治療介入する時代になってくると思います。
世の中にはまだまだ発見されていないIPFの患者さんがいますし、経過観察のみ行われて治療介入されていない方も大勢いらっしゃいます。そういう方に最適な治療を届けることが我々の役割だと考えています。
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ドクター畑地の診察室218.2023.11.19号
毎週日曜日お昼に配信予定です。
次号は2023.11.26.です。
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畑地 治
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三重県出身 自治医科大学卒業後、僻地診療、三重大学勤務を経て、呼吸器内科医師となる
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◆2023年10月
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