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長崎・対馬 「核のごみ」拒否 調査だけで交付金・・・ かつてはカドミウム汚染に苦しめられ 処分場「日本に適地なし」
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原子力発電の過程で出される高レベル放射性廃棄物、いわゆる「核のごみ」の処分地選定をめぐり、第1段階にあたる「文献調査」を受け入れるかどうか議論していた長崎県対馬市の比田勝(ひたかつ)尚喜市長は9月27日、市議会において調査を受け入れない意向を表明。
理由について、比田勝市長は受け入れの是非をめぐってそれぞれの主張による市民の分断が起こり、合意形成が不十分になったことや、風評被害、とくに韓国人環境客の減少など観光業に影響を与えるおそれを挙げた。
比田勝市長は、
「(賛成派・反対派)双方とも対馬市の将来を考えての議論であったと思う。私としてはこの見解をもってこの案件に終止符を打ちたい」(1)
と語り、「核のごみ」をめぐり意見は対立した市民が再び、一体となるような施策を講じていく考えを示す。
「核のごみ」は最終処分場を設けて地下300メートルより深く埋めることを定めており、処分の選定にあたっては3つの段階で調査を行うことになっている。
このうち第1段階にあたる「文献調査」の受け入れについては、対馬市議会が9月12日、賛成派の団体が出していた受け入れの促進を求める請願を10対8の賛成多数採択。
文献調査に応じるかどうかは、最終的に市長が決めることになっていたが、比田勝市長は27日、議会最終日にて文献調査を受け入れない方針を固めた。
今回、文献調査の受け入れを求める請願を出したのは、長崎県建設業協会対馬支部や対馬市商工会(2)。このような推進派は、今後、住民投票の実施や来春に控える市長選での候補者擁立を模索し、対立はしかし収まりそうにない。
目次
・調査だけで交付金・・・
・かつてはカドミウム汚染に苦しめられ
・地質学者ら300人が声明公表 「日本に適地なし」
・調査だけで交付金・・・
再処理により取り出したプルトニウムやウランを再利用する核燃料サイクルを日本は長らく国策として位置付けてきたが、しかし停滞してきた。
その大きな要因が核のごみの最終処分場のような「バックエンド」と呼ばれる、発電が終わった後段階を担う施設の立地場所が決まらないこと。
最終処分場をめぐっては2007年、高知県東洋町が最終処分場に関する初の文献調査に着手。しかし、町長選で反対派が当選し、計画は撤回された。
一方で、北海道の寿都(すっつ)町と神恵内(かもえない)村は2020年11月、全国で初めて最終処分場に関する文献調査を開始している(3)。
地域が調査を受け入れる背景には、人口減や産業の低迷があり、自治体の将来が危ぶまれているからだ。一方で、最終処分場のバックエンド施設に対する調査を申し込むと、多額の交付金が期待され、その交付金で地域の生き残りを狙う。
最終処分場の調査は、文献調査(2年程度)▽概要調査(4年程度)▽精密調査(14年程度)――と進むが、交付金の額はいずれも最大で、文献調査で20億円、概要調査で70億円に上る(その後の額は未定)。
中間貯蔵施設も調査段階で年間1億4000万円、知事が建設に同意すれば、さらに年間9億8000万円を2年間受け取れる仕組みだ(4)。
他方、対馬の比田勝市長は風評被害を大きく気にした。市長は、
「対馬でも福島第一原発事故で韓国との水産物が取引禁止になり、韓国からの大勢の観光客が突然少なくなった。対馬の水揚げ高は168億円。10%でも16億円ぐらいの被害が出る。観光業でも消費効果額が180億円を超えている時もあったので、大きな被害が出る恐れがある」(5)
と語る。
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