毛沢東左派が銀行を敵視へ
米国より低い中国の利ざや
銀行を打ち出の小槌に使う
金融制度の不備が命取りに
中国政府は、怪物と化した不動産開発企業の債務の山を前に悪戦苦闘している。9月の最高指導部会議で、習近平国家主席は不動産開発企業の経営へ介入しないと発言した。これによって、政府は抜本的な対策を取らずにきたが、もはやそういう不介入という事態が許されなくなっている。そこで大急ぎで取った対策が、不動産開発企業「50社リスト」である。政府は、金融機関に対してこれら50社への融資を行うように勧奨するというものだ。
この勧奨では、赤字の不動産開発企業でも無担保融資するようにという「仰天すべき」内容が含まれている。赤字企業へ無担保融資するとは、金融業務ではタブーである。返済見込みの薄い融資でかつ無担保となれば、「背任行為」に問われかねない重大案件だ。これは、不良債権になる確率が100%である。政府が、こういう無謀な融資を勧めるとは、中国の金融秩序の破綻を予告するようなものだ。
習氏が、ここまでなりふり構わずに金融機関融資に頼ろうとするのは、中央政府の財政赤字を一銭たりとも増やしたくないという思惑からであろう。「永久国家主席」の座を狙っている以上、中央政府の赤字を増やさないことが、これを実現する上で大きな役割を果すとみているのだ。同時に、国防資金を確保したいという目標もある。台湾侵攻への準備は怠りない。こういうメッセージを発したいにちがいない。
毛沢東左派が銀行を敵視へ
習氏を初めとする毛沢東左派は、金融業務を「敵視」している。職員が、高給取りで派手な生活をしてきたことに反感を持ってきたのだ。習氏が、3期目に入って幹部を入れ替えた結果、ガチガチの毛沢東主義者が勢揃いした。米国で経済学を学んだ人たちや金融関係者に向かい、「西側かぶれ」と露骨なまでの非難を浴びせている。この感情論が下敷きになって、銀行儲けすぎ論を展開している。不動産開発企業の救済資金は、銀行融資によって賄うという奇想天外な対策を編みだしたのだ。いかにも、マルクス主義者の考えつく案と言えよう。
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