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【死んでも書きたい話】 隣の部屋に人質の女性が

安田純平の死んでも書きたい話
すっかり寒くなりましたがお元気でしょうか。 10月7日にパレスチナのイスラム組織ハマスがイスラエル側を襲撃して1200人を殺害して240人を人質として連れ去ったとされ、その後はイスラエルによる空爆と地上侵攻で死者だけで14000人の犠牲が出ているという状況です。 ここ数日は停戦が結ばれてハマス側の人質とイスラエルが拘束していたパレスチナ人の交換が行われています。ハマスはこれを「戦果」とみなして10月7日の襲撃を正当化するでしょうし、イスラエルとしてはそのままで終わらせるわけにはいかず、一定程度の交換が進んだところで攻撃を再開するのではないかと思います。実際にイスラエルはそのように公言しているわけですが、それだけにハマス側も全員の解放はしないでしょう。 ハマスの襲撃はかなり周到に用意され、訓練も重ねていたということですが、イスラエル側はそれを深刻に捉えずに見過ごしたという深刻なミスがあっただけに、捕虜交換で終わらせるわけにはいかないでしょう。攻撃が再開された場合にはより深刻な被害がでるのではないかという気がしています。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 今回は日記の2016年7月11日から25日までです。 【2016年7月11日(月曜日)】 全く時間不明。夜中、外の扉ガンガン叩きまくる音で起こされる。隣も「ヤラ!ハヤワン!」と呆れている。延々と叩きまくってから去る。 ※ヤラ、は呼びかける際に使う言葉。ハヤワンは「動物」の意味。 この段階では叩いているのが扉の外からか中からか分からず、「去る」と書いている。※ 2-3時間後、また叩きまくっている。仕方なく起きたころに男が来る。ゆで玉子4、トマトときゅうり切ったのを大量。オリーブ、油、タマル(ナツメヤシ)のパック半分、ホブス2枚。「夜も来る」という。 「メシは十分だがテレビは?」 「ここにはない」 「音が問題ならヘッドホンくれればいい。ボスがテレビくれて1年テレビあったんだから」 「考えとく。何かいるか」 「ペン」 数分後、青と赤各1本。扱いはこれまでで一番いいのにテレビが。食ってる間に電気。これなら1日 テレビで過ごせる。太陽がないので洗濯が乾かないが。今までで一番良い。 夜アザーンを生声で叫ぶ奴がいて礼拝をしている。かなり人数がいる。上は奴らのカティバか。 ※カティバは「旅団」の意味だが、駐屯している拠点などもカティバという※ 写したノートをパンツに入れていたのに車で落としてしまう。また1から作り直し。落ちない対策考えないと。小便を我慢する癖がついている。夜中起きて小便。何か特別なことをしているような違和感すら覚える。何しろ自分の意思でトイレに行けるのは1年ぶりなのだ。 自称イエメン人のアブドゥルに似た男(マ)の言っていた「25…」というのを希望にするしかない。画像公開から2カ月経てば動き何が出るだろう。水を大量に飲めるのでうんこをほじらずに出る。筋トレ、ストレッチもできるし体はかなり戻せるか。オレの気持ち次第。 ※民家に監禁されていた間は日に2度しかトイレに行けなかったため、水分の摂取を極力抑えていた影響か常に便秘状態だった。突然もよおしてきてもトイレに行けないため、トイレに行った際にはふんばっても大便が出ないときは指を突っ込んでほじくり出し、少しでも排出するようにしていた※ 同じ場所に捕まっていたトルコ人が解放されても、もうオレの場所は分からない。前のところならすぐ探りもできただろうが。そう考えるとトルコ人は帰されてもオレは帰されないのかもとも思う。(マ)が車の中で「トルコ、トルコ」と言ってたのは、トルコ人解放の話だったのかも。車を乗り換えたのはオレを別部隊に渡し、自分らはトルコ人を移動させるために民家に戻ったのだろう。 ※トルコ人は私が監禁されていた民家に外から入ってきて敷地内を探っている間に捕まったため、あの民家の場所は知っている。そのトルコ人を同じ場所に入れていたということは、トルコ人だけを解放するということはないはずと思っていたが、結局はトルコ人だけを解放し、私は別の場所に移されたというだけのことだった※

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  • ジャーナリスト安田純平が現場で見たり聞いたりした話を書いていきます。まずは、シリアで人質にされていた3年4カ月間やその後のことを、獄中でしたためた日記などをもとに綴っていきます。
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