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高野孟のTHE JOURNAL Vol.629 2023.12.4
※毎週月曜日発行
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《目次》
【1】《INSIDER No.1235》
米国が覇権国を辞めたくても辞められない地獄に嵌まっ
た根源/100歳で亡くなったキッシンジャーのシニカル
な人生
【2】《CONFAB No.595》
閑中忙話(11月26日~12月2日)
【3】《FLASH No.543》
岸田首相が「外交が得意」だというのは本当なのか?
元外交官の冷ややかな答え/日刊ゲンダイ11月30日付
「永田町の裏を読む」から転載
■■INSIDER No.1235 23/12/ 04 ■■■■■■■■■■
米国が覇権国を辞めたくても辞められない地獄に嵌まっ
た根源/100歳で亡くなったキッシンジャーのシニカル
な人生
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誰にせよ或る人の業績を語るのに「功罪相半ば」とい
うほど凡庸な形容はないけれども、去る11月29日に100
歳と6カ月で大往生を遂げたヘンリー・キッシンジャー
米元安保担当補佐官&国務長官についての内外の論評
は、まさに「賛否両論」と言うに尽きる。
端的な一例は、ベトナム戦争の拡大と終結における彼
の役割である。1973年には同戦争のパリ休戦協定を成就
させたことを理由に、交渉相手のベトナム共産党のレ・
ドク・ト政治局員と共にノーベル平和賞を共同受賞し
た。それは「功」であるには違いないが、その決定に至
るまでには、ノーベル平和賞審査委員会の中で激しい議
論が巻き起こり、キッシンジャーへの授賞に反対した2
人の委員が抗議の辞任をするに至った。しかもベトナム
側のレ政治局員が「戦争はまだ終わっていない」ことを
理由に受賞を辞退するなど、キッシンジャーにとっては
傷だらけの勲章となった。その面から見ればこれは彼の
「罪」そのものである。
●術策に溺れて戦争を長引かせただけ
キッシンジャーへの平和賞授与に反対した2人の委員
が挙げた最大の理由は、米国のカンボジアやラオスに対
する違法な爆撃や地上軍事作戦だった。
1968年11月の米大統領選で共和党のニクソン候補のブ
レーンとなったキッシンジャーは、民主党のジョンソン
政権の下で泥沼化していたベトナム戦争から米軍を「名
誉ある撤退をさせる秘密の方策」があるとニクソンに演
説させ、国内の厭戦気分や反戦世論に取り入ろうとし
た。
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