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【Vol.511】冷泉彰彦のプリンストン通信『日本政治における空洞について』(改行なし)

冷泉彰彦のプリンストン通信
「ついにクビとなった嘘つきサントスが残した共和党の内紛」  2021年11月の中間選挙で当選したジョージ・サントス前議員(共和党、NY3区選出)については、当初から経歴詐称の疑惑が取り沙汰されていました。とにかく、その「ウソ」は多岐にわたっていました。 「名門進学高校に在籍、その後大学進学して卒業、更にニューヨーク大学でMBA取得」(全てウソ) 「ユダヤ系でホロコースト被害者の子孫」(ウソ、本当はブラジル系でカトリック) 「シティバンク、ゴールドマン・サックス証券に勤務」(どちらもウソ) 「自分はガンに罹患したが生還」(ウソ) 「母親(故人)が911テロに遭うも奇跡的に生存」(ウソ、本当はその時点で母親はブラジルで生活)  ということで、とにかく経歴のほとんどが詐称であっただけでなく、行動もメチャクチャでした。 「動物愛護の基金を偽名で主宰して、そのカネをネコババ」 「ユダヤ系を詐称している一方で、裏では散々ユダヤへの差別発言」 「DNAテストでユダヤ系と証明されたと強弁するも証拠なし」 「死んだ母親の葬儀費用を踏み倒し」 「ブラジル時代に女装のチャンピオンだった」 「ゲイと公言して同性婚していながら、女性と重婚していた」 「選挙区に居住していなかった」  更に、選挙資金の私的流用など様々な金銭トラブルも報じられており、疑惑の数はハンパでないという状態でした。ですが、議会共和党はサントス議員の除名には消極的でした。というのは、与野党の議席の差が3しかない中では、サントス議員を除名すると差は2議席になってしまい、例えば病欠者などが出ると評決がひっくり返ってしまうからでした。  ですが、その一方で、時々刻々と次の選挙が迫ってきます。下院は2年毎に全員改選ですので、任期は残り11ヶ月、議員の誰もが再選を意識する時期です。そんな中で、サントスのような「怪しい議員」をそのままにしていると、特にサントスの選挙区が近い議員の場合は「不利」になります。ですから、民主党だけでなく、サントスの属している共和党の議員団でもサントス除名の声が広まっていたのでした。  例えばですが、下院の共和党議員団の幹部である、エリス・ステファニク議員(NY21区選出)は、他でもないサントス議員を引っ張ってきて、選挙資金の面倒も見ていたようです。そのステファニク議員などは、ある時点までは自分のメンツからサントス議員を擁護していましたが、ここへ来て猛批判を繰り広げてサントス除名に動いたのでした。  というわけで、共和党としては「もう庇(かば)えない」ということでサントス除名となったわけですが、その評決は興味深い結果となりました。まず民主党のほぼ全員が除名賛成となったのは当然として、そこに共和党の105票が加わったのでした。結果として、除名は賛成311、反対114の大差で可決されたのです。(続く)

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  • 冷泉彰彦のプリンストン通信
  • アメリカ北東部のプリンストンからの「定点観測」です。テーマは2つ、 「アメリカでの文脈」をお伝えする。 「日本を少し離れて」見つめる。 この2つを内に秘めながら、政治経済からエンタメ、スポーツ、コミュニケーション論まで多角的な情報をお届けします。 定点観測を名乗る以上、できるだけブレのないディスカッションを続けていきたいと考えます。そのためにも、私に質問のある方はメルマガに記載のアドレスにご返信ください。メルマガ内公開でお答えしてゆきます。但し、必ずしも全ての質問に答えられるわけではありませんのでご了承ください。
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