【最強の戦法】
「似合わねぇ、お前が着ると貧弱に見えるな」
「それは体型だろお前は太ってるから似合うんだよ」
「あーそれにしてもこの時期は嫌だな、こんなだっさい格好でデリにでるなんて」
毎年、12月になるとサンタクロースの格好でデリバリーするのが恒例になっていた。
「おぉ、望月似合うじゃねぇか」
「でしょ」
「コイツはデブだから一番似合うんですよ」
「余計なこと言うなよ」
サンタクロースの衣装で盛り上がっていた。
しかし、嫌々ながらも、誰も断る人はいなかった。冬の寒い季節になると、サンタクロースの衣装を着てる方が暖かいからである。
「店長も着たらどうですか?」
「いや、遠慮しとく、俺デリ専門じゃないから、そんなの着てたらマネージャーに張り倒されるだろ」
12月に入るとクリスマス気分でスタッフの表情も明るかった。
みつおも高校3年生の後半はバイトをしていたので気持ちは分かる。
12月は恋の季節だ。
男子も女子もクリスマスに向けて気持ちが高ぶるのだ。
しかし、それと同時にピザ屋にとって忙しい時期である。
通常よりも人数を多く入れて店がまわるようにしないと行けない。
シフトを考えるのも悩みの種だった。
「岡本くん、悪いけど来週も5日出勤できない?」
「いや、店長無理ですよ、僕ここだけでなくビデオ屋でも働いているので、この時期はビデオ屋も忙しいんですよ」
「分かった、じゃ4日は大丈夫?」
「4日も厳しいけど、クリスマスがあるんで何とか出ますよ、向こうにももっと出れないか言われてんすけど、こっちのほうが本命なので」
岡本君とは、クリスマスを仕切るのを買って出てくれたリーダーである。
実力がある人間はどこでも引っ張りダコなのである。
「店長、俺6日出ても大丈夫ですよ、年末のデート代稼ぎたいんで」
田中が横から口を出してきた。
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