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週刊Life is beautiful 2023年12月12日号:Elon vs. Walt Disney、LLMの弱点

週刊 Life is beautiful
今週のざっくばらん 修正 複数の読者にご指摘をいただきましたが、先週のビットコインの大まかな流れに書いた年度が10年ずれていたので修正させていただきます。サトシ・ナカモトは暗号技術の専門家。大学では数学を勉強し、博士号を取得済み。プログラミングにも精通しているが、大学に残り、暗号技術の研究を続けていた。学生時代からの彼の夢は、分散型台帳が持つ「二重支払問題」を解決すること。二重支払問題(それぞれが非同期に動くサーバー間で、どうやって「同じ口座から同時に持っている以上のお金を引き出す」などの不正を防ぐか、という問題で、過去20年間、誰も解決できなかったとても難しい問題。この問題を解決する上で、サトシが注目したのは「ゲーム理論」。参加するプレーヤーが自分の利益を最大化しようとした時にこそうまく動くシステムが設計出来れば、「二重支払問題」を解決できると考えた。サトシがその問題の解決方法を思いついたのは2008年の頭ごろだ。しかし、論文だけ書いてもその価値を理解してもらうのは難しいので、その設計に基づいたアプリケーションを作るべきとサトシは考えた。そんな時、リーマンショックが起こり、大きすぎる銀行は救済され、米国政府は大量のお金を印刷し始めた。大量のお金を印刷しながら、起こるはずのハイパーインフレーションが起こらない日本を見て、米国でも同じことをしても良いという考え(MMT: Modern monetary theory)が台頭し始めたのはこの頃。サトシは、世の中が必要としているのは、誰にもコントロールされず、希薄化もしない、法定通貨に変わる新たな通貨にあると考え、その通貨こそが、彼が発明した分散台帳の最適なアプリケーションだと考えた。ビットコインが誕生した瞬間だ。彼はその発想に基づいて、ビットコインの実装を進め、2008年の後半には彼のマシンの上でビットコイン・ネットワークが動き始めていた、サトシは並行して進めていた論文を発表した上で、ビットコインをオープンソースとして公開することを決めた。しかし、ビットコインを法定通貨に変わる通貨として世の中に提供するには大きなリスクが伴うとサトシは考えた。暗号技術の研究者が米国政府から逮捕されたこともあるし、P2P型のネットワークサービスWinnyをオープンソースとして提供した金子勇氏が日本で逮捕されたことも、サトシは良く知っていた。そこで、サトシは、実名を隠し、論文もソースコードも匿名で発表することに決めた。実名で発表すれば、名声も得られて彼のキャリアに大きなプラスになるかも知れないが、反逆罪や犯罪幇助の罪で牢屋に入るリスクは避けたいし、それによって、せっかく作ったビットコインが世の中に広まらないことになるのは、あまりにも勿体無いとサトシは考えたのだ。 Elon vs. Walt Disney Elon Muskの発言をきっかけに始まった、X(旧Twitter)向け広告のボイコット運動に、先週、大きな動きがありました。New York Timesによるインタビューで、Elon Muskが放送禁止用語で、広告主たちを(特に、Walt DisneyのBob Igerを名指しで)批判したからです。 インタビューは、ここで見ることが出来ます。1時間以上の長いインタビューですが、是非とも最初の5分だけでも見てください。彼の、「Go F*** Yourself」という言葉が、相手に対する最も攻撃的な言葉であり、公の場では決して言ってはいけない言葉だとされていることを考慮すれば、とんでもない過激な発言です。Elon の発言を受けで、インタビューアーがどう対処して良いのか困っている姿が笑えます。 この騒動のきっかけは、Elon MuskによるADL(Anti-Defamation League:反ユダヤ主義と戦う団体)の批判です。イスラエルによるガザ地区への攻撃が始まって以来、イスラエルとアラブ民族の対立があらゆるところで高まっていますが、その中で、ADLが行なっている行動を批判するツイートをElon Muskが擁護した結果、彼が「反ユダヤ」だと批判されてしまったのです。 この発言そのものに関しては、Elon Musk自身も「不用意な発言だった」と認めているものの、Walt Disneywを筆頭とした広告主たちが、Xへの広告出向を止めたことに関しては、怒りを隠さず、「Go F*** Yourself」と繰り返しているのです。 この件に関しては、色々な見方がありますが、従来型のメディアへのアクセスが急激に減り始めて入りる(参照)その中でも、左翼系メディアへのアクセスの減少が目立つ(参照)Elon Muskが購入する前までは、Twitterは左翼寄りの検閲をしていた という背景もあるため、「自分たちに都合の良い情報ばかりを流す左翼メディア vs. X」という対立構造の中で、この騒動が起こった、という見方もあります。

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